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千と千尋の神隠しのレンタルショップ店長Mのレビュー・感想・評価

千と千尋の神隠し(2001年製作の映画)
4.4
宮崎監督は前作『もののけ姫』公開当時、「大人よりも、むしろ子供の方が本質を理解してくれると思う。」的な発言をしていて。それ、凄く理解できるんですよ。

で、本作の時は「10歳の子供のために作った」って発言してたんですけど・・・今になって、この言葉は むしろ大人に向けたものだったのかな、と思っています。


その映画の本質がどこに現れるかは作品毎に千差万別だと思いますが、本作の場合は物凄く端的に言うと、主題歌の『いつも何度でも』に凝縮されてる気がします。


「繰り返すあやまちの そのたび人は
ただ青い空の 青さを知る 」

「かなしみの数を 言い尽くすより
おなじくちびるで そっと歌おう」

「海の彼方には もう探さない
輝くものは いつもここに
私の中に 見つけられたから」


涙必死。改めて物凄く良い歌詞ですけど、正直この良さを理解できるまでに、僕はかなりの年月と人生経験を要しました。


つまりこの映画は監督の言葉とは裏腹に、10歳の子供を『見守り導く側』の大人の視点から作られていて、

過ぎて行った自らの幼少時代への想い・経験を前提に、今 自分の周りにいる『守りたい子供達への愛』をもって成立している気がします。

子供が本作を観て「頑張ろう」となる以上に、周りの大人達が「周りの子供を助けてあげよう」となる。多分そういう映画ですよね。「10歳の子供のために作った」の本意はここにあるのかな、と。

それを象徴するかの様に、本作には様々な年代・立場の『千尋を導く者』が出てきます。

面白いのですが、本作はその内の誰に感情移入して観るかを、観た時の年齢や立場によって自由に変えられる様に考えて作られている気がするんですよ。

観る者の人生経験の度合いに随時対応した映画と言いましょうか。凄い話ですが。


『登場人物全員を合わせると、それが一人分の人生になる』

長くなりましたが、これが僕の本作に対する要約とさせていただきます。


感動のピークは、自分が当時の宮崎監督と同じ『60歳』になった時に来るはず。
上の話で言うなら、『銭婆』あたりに感情移入して観る時です(笑)。楽しみ!

26年後に、5.0点で再レビューしたいと思いますので、その時は『いいね!』お願いします!



余談)
千尋とリンが夜、仕事終わりに、水上を走る電車を見ながら饅頭を食べるシーンがこの世の全映画の中で最も好きです。あの世界に浸りたい。