かつきよ

パシフィック・リム アップライジングのかつきよのレビュー・感想・評価

2.0
この作品を好きな方には大変申し上げにくいのですが、すみません、前回の良いところは全て台無しになっていると感じて、残念に思いました。
前作は超えられなかった、とかならまだ良いのですが、前作の雰囲気をぶち壊している点で、酷い映画だと思います。

世界観を共有した別作品として見られるなら良かったのですが、お話自体前作の10年後になっており、登場人物も共通する為、どうしても比較する場面が多く、劣化を感じざるを得ません。
正直、評価が低いので凡作になるのは覚悟していましたが、パシフィックリムの正史に加えて欲しくないレベルです。

まず第一に、キャラクタに関してですが、前作に出てきたキャラクタを雑に扱いすぎです。
設定上10年のブランクがあるとは言え、人格設定に違和感があり、それぞれのキャラクタは解釈違いの非公式の同人誌のような造形の浅さが目立ちます。(監督変更による影響でしょうか)
人格だけでなく、展開に対するキャラの配置が酷いと感じました。
前作の面白さを理解して、リスペクトしているなら、絶対にこのような演出は行わなかったでしょう、という扱いが多々あります。
前作のキャラクタに愛着が湧いているファンならば、少なからずショッキングにうけるはずです。

新キャラに関しても、素材はよかったのに、設定やがあまり活かし切れてませんでした。展開や描写は前作のまるパクリみたいなシーンがありますし…「え?前回と同じ描写してどうすんの?」と思ってしまいます。せっかくキャラが違うのに焼き直ししてどうするんや。
せっかく2時間近くもあったのに、キャラクタが十分に描き切れておらず、設定だけが浮いてしまっています。造形の深さが足りずに、キャラクタ重視で見るタイプからすると、かなり物足りません。
主要新キャラ二人に関してですらそうなのですが、他の仲間新キャラに関してはもっと悲惨です。いる意味あった?って感じです。ロボットをわちゃわちゃ動かしてチーム戦にするために新キャラ作るど!ってとこまで良かったんですけど、掘り下げもキャラ付けも足りずに、本当にロボの中の人要員のためだけに作られた使い捨て駒キャラにしか見えません。例えば前作のジャパンヲタクスピリッツを理解してくれるギレルモデルトロ監督であれば、もっと、わかりやすく個性豊かなキャラ付けをすることによって、各ロボの戦闘スタイル・戦術性にかなりの個性をつけてくれたはずだと思います。

第二に、前回のようなロボ/怪獣ヲタクのマニアックな雰囲気は完全消失しております。
前回は日本の特撮や怪獣、ロボに対するリスペクトを多分に感じ、その美学がしっかり取り入れられていたため、「the海外製の勘違い日本文化作品」色は全くなく、日本のヲタク文化の魂、美学ををしっかりと抑えつつ、海外パワーでダイナミックに仕上げた傑作!となっておりました。
海外作品なのに日本ぽさを感じる、というか、ヲタク大好きなワクワクする展開のツボをちゃんと抑えてる感じだったのです!

対して、今作品は「海外製、勘違い日本文化作品」のお手本みたいな作品です。
日本製のゴジラに対しての(あの伝説の)海外版ゴジラみたいな感じです。
「え、ゴジラって、そういうんじゃないじゃん…それじゃただのエイリアン映画やん…」ってなった方も多いと思います。

今回の映画は、怪獣 vs ロボの形をとっていますが、ノリと雰囲気はまるっきりモンスター(エイリアン) vs ヒーローです。
こんなこと言いたくありませんが、アメリカってホントこういうノリ好きだよね…アメリカに通すとなんでもこの味付けされちゃう…
っていうような作品です。
私も好きですよ!かっこいいですしわかりやすいですし!でも、最初からそうならば良いのですが、前作のあの造り込みから、今作でそうしちゃうのは、本当に今作の監督に失望しましたし、そんなことするくらいなら作らないで欲しかった…と思ってしまうほどです。
前回の重々しく、仄暗く、フィクションなのにどこかリアルだった怪獣とロボの応酬はまるでなく、今回は走って飛んで動いて、明るいシーンでド派手に戦いまくる、まさにアクション映画です。
そこに前作のようなリアルな重量感はなく、あーSFだなーっていうような、軽快さが目立ちます。
モンスターも怪獣じゃなくてエイリアン。ロボットも、リアルさはなくただのCGましましのエンターテイメント。前作の方がリアルだった…。

戦闘シーンに関しては、たしかに手数が増えて、機体も増えて、迫力もギミックも増してド派手にやってました。でもそんな映画ならたくさんありますよね。見応えはバッチリありましたが、私が見たかったのはそういうのじゃありませんでした。前作のパシフィックリムには、パシフィックリムにしかない「アジ」があったのに。
どうして、なんでもしょっぱくすれば良いってもんじゃないんだから〜!!!!ともどかしくなります。

最後にかけての展開は大味ながらも嫌いじゃないのでワクワクはしましたが。
でも、最後の最後のED前のシーンとか、もう笑止千万。言っちゃえば、次回作の匂わせシーンです。しかもそこから匂わせる次回作のプロットはまさにTHE そういうタイプの映画の続編って感じで、ゾッとしました。

なかったことにして欲しい系続編です。
前作が好きな人ほど、お勧めできません。
もし好きな人いたら、こんな酷い言い方してしまって申し訳ございません。。。
かつきよ

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