彦次郎

ドラキュラZEROの彦次郎のレビュー・感想・評価

ドラキュラZERO(2014年製作の映画)
3.7
オスマントルコ帝国メフメト2世より1000人の人質を要求されたトランシルヴァニア国王ヴラド・ツェペシュが吸血鬼カリグラと契約して帝国と対決するファンタジーホラー。
タイトルにあるZEROから察せられるようにいかにしてドラキュラが誕生したかというお話ですがドラキュラのモデルとなったヴラド・ツェペシュをベースにしたことで中世歴史要素が存分に味わえる設定になっています。なおwikipediaによると”「ツェペシュ」は姓でもミドルネームでもなく、「串刺し公」、原義では「串刺しにする者」を意味するルーマニア語の異名、すなわち「ドラキュラ」と同様にニックネームであって、名前は単にヴラドである”ということで貴族でも容赦なく串刺し刑に処する冷徹な政治家であったようです。
本作では妻ミレナそして一人息子インゲラスを愛するのみならず民をも大切にする君主として描かれていますが優しさゆえにヴラドは帝国の使者ハムザ達を斬り捨てることで戦争に至る有様で国を憂いて自ら帝国の奴隷とならんとする息子の方が冷静で君主に向いてそうな気もします。使者を殺して海外戦争に至るというと野蛮なイメージがありますが日本でも北条時宗が同じようなことをして元寇になったのは歴史が示す通り。日本では神風が吹いた(とされる)のに対してヴラドは牙の山に住む魔物に救いを求めるというこちらもオカルト頼りになっていますが3日間血を我慢すれば人間に戻れる限定ヴァンパイアとなることで大国と戦う一騎当千の戦士が誕生したと思えばむしろ合理的といえるかもしれません。戦争でいえば合理的ですがヴァンパイアになったことでの苦悩が深まっており更なる悲劇を呼ぶ展開でヴラドを演じたルーク・エヴァンスの表現力が素晴らしかったと思います。
ドラキュラで無敵の力を得た!…となるところ敵方もキチンと弱点を把握しており、いつもなら人間側にとって頼もしいアイテムが弱点となりヴラドを苦しめるのは斬新でした。戦った後の民衆との関係も人間のサガが描かれており結末も納得のいくものでした。
本編と関係ありませんけどヴラドが生まれた年(諸説あるけど)に聖女ジャンヌダルクが火あぶりに処せられており奇縁を感じた次第です。
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