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新選組始末記の東京キネマのレビュー・感想・評価

新選組始末記(1963年製作の映画)
4.5
芹沢鴨暗殺から池田屋襲撃事件までをほぼ史実に忠実に描いている。原作は子母澤寛だが、小説というよりもドキュメントに近い。

とにかく、三隅研次の演出が素晴らしい。トップ・クレジットからしてぜんぜん違う。全てが日本的な場景がバックグランドなのだが、構図の取り方、画角の切り取りもアブストラクトだったり、ちょっと浮世絵風のフラットな構図もあったりで、画面設計全てが美しい。遊女の階段落ちや、池田屋襲撃の屋根裏のセットも素晴らしいし、厚くて重い音楽と粘り気のあるしっとりした色調(アグファゲバルトかフジカラーか、この時代独特のトーン)もいい。映画全体が本当にエレガントだ。

水路脇の小路を撃ち損ねた敵を追いかけるシーンで、敵がフレームから見えなくなる瞬間にいきなり野良犬が吠える場面で、トリプルアクションのジャンプカットから血がしたたるシーンへの一連の編集などは、ほれぼれするほどシャープだ。戦闘シーンもほとんどはチャンバラ剣劇的な殺陣なのだが、黒澤明的な血しぶきはないものの、肉を刻むような“痛み”のリアリティーがある。



サムライミやタランティーノといった三隅フリークが世界中に居るのも納得できる作品だ。しかし、54歳で亡くなるとは本当に惜しい。せめてあと10年生きていればと心から思う。
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