Ricola

聖者たちの食卓のRicolaのレビュー・感想・評価

聖者たちの食卓(2011年製作の映画)
3.8
インドにある「黄金寺院」と呼ばれるハリマンディル・サーヒブでは、毎日巡礼者や旅行者に無料の食事が提供される。
この食事を皆でする場・空間においては、どんな階級や身分であってもどんな暮らしぶりをしている人でも、文字通り同じ釜の飯を食うのだ。
この寺院で食事が提供される過程と、訪れる人々の様子が丁寧に映し出される作品である。


大きな鍋を支える炎のショットに心が落ち着く。
この鍋は多くの人々の胃袋を満たす食事を作る基盤となるものである。
とはいえ基盤はもちろん鍋だけではない。
まだ霧がかった早朝の畑で収穫される作物や、その食材を切り刻む人々、鍋に入れて煮込む人々など、さまざまな人や生命が集合してこそ何千もの食事が作られているのだ。

給仕係視点の足元にズラリと並ぶお皿。
次々とそこに食べ物が給仕される。
被写体の横にカメラが寄り添うことで、どれほど多くの人々がこの食卓に関わっていることが一目でわかる。
人々は寺院に入るのに手を洗い、足を清める。食べる様子もお皿を洗う様子も、やはり並ぶ人々を横から映し出すことで列が強調される。

水は人を清め人を生かすものである。
恵みの水のありがたさをしみじみと感じる描写に息を呑んだ。
人の手や足、食器を洗浄し、床や絨毯を洗う。
川からバケツで汲んで運ばれる水、勢い良く放たれる水を浴びせた絨毯をパタパタさせて洗う。しぶきをあげて吹き上げる水が日光を吸収してキラキラと眩しいのも、水の美しさを示すのみならず、生命を維持するために欠かせない水の神聖さをも示されているように感じた。

身分や老若男女関係なく、どんな人でも招き入れる寺院。
そこは生命が循環する空間であり、人間が
共同体として生きていくことの基本と原点がそこにはあった。
Ricola

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