新潟の映画野郎らりほう

沈黙ーサイレンスーの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)
3.7
【紗に視野を狭められた排斥主義】


雲仙の熱泉に沸く蒸気。山々に立ち上る霞。水辺の朝靄。岩礁に破砕される波の飛沫。炭焼小屋の烟。湿気た遺骸が上げる不完全燃焼の燻煙…。紗(薄絹)に覆われたかの朧気な映像 が全編を支配する。

牢の中、告解を嘆願するキチジロー(窪塚洋介)のもとへ パードレ(ガーフィールド)が歩み寄る。格子柵越しにパニングするその映像は、格子が二人を都度遮り 明と暗が瞬時明滅をくり返す。それはキチジローに対し そして自分に対し迷妄生じたパードレ自身の揺れる心象でもあるだろう。

英EU離脱。米TPP離脱/NAFTA見直し表明。ヘイトスピーチ。蔓衍する排他/保護主義の波。世界を覆う不寛容な世相…。

ラストショット。ここでも燻煙とゆう紗が視界を覆ってゆく。最期迄不明瞭な世界は 遂に互いを解り合う事なかったとゆう事か。
微かな灯りを一つだけ残して-。




《劇場観賞》