「美しく生々しくも繋がりを持たない映像の断片の数々、宙に浮いたままの寡黙なモノローグ、これらを覆う静謐で陰鬱な劇伴。いやあ、これ、難しいわ。想像以上に難解だわーと開始10分で白旗を上げました。」
↑これは遡ること4年前、同監督による「聖杯たちの騎士」を観た際に記録しといた感想なんですけどね。びっくりするほど寸分違わぬ印象を抱きましたよね。いやいや待て待て、同じ監督&同じ撮影監督による何度目かの再タッグなんだから作風いっしょで当たり前だろ?ってか本っ当に学習能力ないよね自分、っつう話だってことは百も承知なんですけど、それにしたって、この豪華キャストを以ってして夢とか青春とか音楽とかいうキラキラお題を扱うとしたらですよ、ましてやイギーやらレッチリやらまで担ぎ出すならいくらなんでも多少は分かりやすく仕上げてくるだろうよ?さすがにね?…って早とちりしちゃったんですよ。ごめんなさい。わたしが甘かった。
映像の美しさに関しては相変わらず折り紙つきで、特に水辺の光の切り取りかたなどはもはやお家芸と呼んで差し支えなさそうな安定のクオリティなんですけど、いかんせんひとつひとつのカットが短い。このままもうちょっと見惚れていたい、という心地よさを容赦なくぶった切ってくる寸止めっぷりが延々と続くわりに、人物から人物へと視点を動かす際だけは舐めるようにカメラを動かすんですよね。時系列という概念をハナから無視した脈絡のない白昼夢は、安直な共感を拒むばかりか作品世界を理解しようと試みる姿勢すら許してくれそうにありません。分かるやつだけ分かればいいの極みってやつで、分からんわたしは門前払いで置いてけぼり。イギーでもアンソニーでもいい、この膠着した物語を今すぐ全部ぶち壊してくれないか?と願うような気持ちで観てました。ずっと、ただただ息苦しかった。