踊る猫

ローズの秘密の頁(ページ)の踊る猫のレビュー・感想・評価

3.9
ミステリ的な味つけが施されているのだが、ページをグイグイめくらせるようにして展開のスリルで「魅せる」映画だとは受け取れなかった。ではどういう映画かといえば、人の正気と狂気、真実と嘘はどこで分断され得るのかという問いを放っているのではないか。ルーニー・マーラ演じるローズは自身の赤子を殺した罪を問われて精神病棟で拘束されている。彼女の記憶の中にあるものはしかし、妄想ではないか。実際に子を生むきっかけとなった男は誰か、赤子は本当に彼女が殺したのか。もっと謎解きに淫して(これだけの魅惑的で旨味のある「謎」を提示できているのだから)語ることも出来ただろうが、この制作陣はそんな凝ったギミックを捨てて真っ向からラブ・ストーリーを語ることを選んだようだ。従ってアイルランドとイギリスの関係からこの映画を読み解く政治的な切り口も、前述した謎解きの切り口も訳に立たない。だからヒューマン・ドラマとして読み解くしかないのだが、そうなってくるとルーニー・マーラの健闘以外に観るべきものはあっただろうか、と意地悪く言ってしまいそうになるから困りもの。
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