三郎丸

チャップリンからの贈りものの三郎丸のレビュー・感想・評価

2.9
1978年スイスで実際に起きたチャップリンの遺体誘拐事件をヒントにしたコメディ映画…ですかね。

今作、チャップリンの遺族も映画化に全面協力して墓地や邸宅をロケに提供(チャップリンが愛した立派な桜の木が出てくるのですが、桜より庭のあまりの広さにヒきます…)

主演の冴えない二人の男にはブノワ・ポールヴールドとロシュディ・ゼム。

刑務所を出所したエディ(ブノワ・ポールヴールド)は親友オスマン(ロシュディ・ゼム)の家に迎えられますが、オスマンの娘はまだ小さく妻も入院中で、医療費が払えないほど貧しい暮らし。
1977年のクリスマスの夜、エディがどっかから拾ってきた汚いTVを観ているとチャップリンが死去した事が報じられる。
エディは埋葬された棺を盗み出し身代金を奪って生活費に充てようと、渋るオスマンを巻き込んで犯行に及ぶが…

何をやっても失敗続きの冴えない二人が、家族や仲間に支えられやがて自分の進む道を見つけ出すというハートフルストーリーなのですが脚本の練りこみが甘く、途中までハートフルというよりシンドさキツメのドタバタ(特にエディのドリフコント的なドタバタはキツい…)な感じで進んでいきます…
喜劇王の墓泥棒という大それた真似をするくせに、何処か緊迫感が足りずチャップリンの奥さんへの電話脅迫も脅迫以前に言語が通じないという脇の甘い計画…
生活苦で仕方なくやったというより、
行き当たりバッタリ感が止まりません…なのですが、チャップリン作品へのオマージュが(音楽やエディのピエロへの転身等)あちこちに埋め込まれていて、常に弱者、貧者、大衆の側から映画を作り続けたチャップリンの目線を感じることができ、人々に愛された偉大さを再確認する事はできます。

ワタシ的にツボったのは、劇中エディが拾ってきたテレビの手で調節するアンテナ!(伸縮タイプのアンテナで少しでも動くとすぐ映像が映らなくなるヤツ)
ワタシの家にも昔同じアンテナがあり、散々時間をかけアンテナ調節して、折角画像が写っても、アンテナバランスが悪いと倒れたりテレビ台から落っこちてテレビが砂嵐状態…まーた、イチからやり直しでイライラしたのを思い出しました。(今の若者にはなんのコッチャ分からない話だと思いますが…)

観ていて、違和感を感じたのは墓泥棒2人の裁判部分。
いくらチャップリンが生前、弱者や貧者の味方です!という人であったとしても、墓泥棒は立派な犯罪ですので裁判部分を描いたなら、判決は下されるべきだと思います。
都合よく綺麗に終わろうとしたなー、と感じてしまいました。(チャップリンのお墓参りしてごめんなさいって…)

チャップリン好きであればオススメです。
三郎丸

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