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善き人に悪魔は訪れるのMOCOのレビュー・感想・評価

善き人に悪魔は訪れる(2014年製作の映画)
3.5
「どなた?」
「すみません、お宅だけ明かりがつく点いていたので・・・。
この近くでクルマをスリップさせてしまって。
 電話をお借りできませんか?
ここ(玄関の外)でかけますからお邪魔はいたしません」

 5年前5人の女性の失踪に関わった容疑で全米で指名手配されたが不起訴となったコリンは、酒場での男性殺害では有罪となり模範的に5年間を過ごし仮釈放を申請したのですが却下されました。コリンは刑務所へ帰る車内で監視の警官二人を殺害して逃走しました。コリンの目的は逮捕後音信不通になった恋人アレクシスを見つけ出すことでした。
 車を盗み探し当てたアレクシスの家で「寝顔がすてきだから、起こさず行くよ」というアレクシス宛の男からのメッセージと自分が刑務所から出した未開封の手紙の束を見つけ、帰宅したアレクシスを問い詰め殺害して逃走します。
 嵐の中ハンドルを切り損ねたコリンは車を走行不能にしてしまい一軒の家の玄関チャイムを鳴らします。

 デリーは夫ジェフリー娘ライアンと生まれてまもない赤ん坊サムの四人で一軒家で暮らしています。その日ジェフリーは翌日が父親の誕生日で早朝からゴルフの約束があり、嵐の中実家に帰って行きました。しかたなくデリーは親友メグと夜を過ごす約束をしました。

 その嵐の夜、玄関のチャイムが鳴り、デリーがドアを開けると額から血を流したずぶ濡れの男が立っていました。デリーは男に電話機の子機を渡し、男は玄関先でレッカー会社に電話をしました。

 男を気の毒に思ったデリーは「夫は留守だがすぐに帰って来る」と、警戒しながらも男に家の中でレッカー車を待つよう勧めます。

 そこへ親友メグが現れ3人でワインを飲み始めるのですが、デリーが席を外したときメグはコリンの話がおかしいことを追求するとシャベルを振りかざされてしまいます。
 デリーはコリンに「メグは急に用事を思い出し帰った」と言われ「ご主人が戻るのは嘘だったのか?」と聞かれます。子機の電話線が切断され、キッチンのナイフがすべてなくなっていることに気が付いたデリーは隙をつき親機で警察に電話をします。

 警察への電話に気がついたコリンは警察がやってくる前にデリーの車にデリーと子供達を乗せ家を後にします。
 コリンは危険なのに何故かアレクシスを殺害した家に戻っていくのです。

 アレクシスの家に身を隠すと、もともと調子の悪かったデリーの車は駐車場で防犯装置が誤作動してけたたましくクラクションを鳴らし始め、コリンはデリーを縛り付け床に転がしクラクションを直しに行きます。気がつくとデリーの横にはアレクシスの死体が転がっていてその向こうにはアレクシスの携帯電話が・・・。

 Wikipediaによれば、北米での公開初週末に2175館で公開され、2425万ドルを稼ぎ、週末興行収入ランキング初登場1位となりながら、映画批評集積サイトRotten Tomatoesの50件のレビューの平均点は10点満点中3.2点「キレがなく、独創性もなく、退屈な作品。俳優の才能と観客の時間を浪費している」と酷評をうけています。

 事故を起こした男にどんなに同情したとしても、男を家に招き入れる展開に無理がありすぎるのです。幼い娘がいる母親がそんなことをする訳ないことからこのストーリーは成立しないのです。


 このB級映画はおそらく出演者イドリス・エルバとタラジ・P・ヘンソンに制作費の大半を費やしていると思うのですが、二人がミスキャストです。
 ヒロインのタラジ・P・ヘンソンに、か弱さがないゆえにレイプされてしまうのではないかという危機感が全くなく、スリル感をなくしています。失礼ですが、2010年の「ベスト・キッド」でジェイデン・スミスのお母さんやった人ですよ、この映画の出演はその4年後なのです。
 脱獄犯イドリス・エルバもどうしても凶悪犯には見えてこないのです、人の良さそうな顔つきで、役どころも隙だらけでベニーにやられっぱなしなのです、6人?も殺した凶悪犯なんですよ、5年もの間悶々と暮らしていたのですよ、なのに性欲が微塵も見られないのです。


 アレクシスの携帯電話発見から予想外の展開になっていき、『コリンがデリーの家の方へ向かっていた理由』、『危険なアレクシスの家に戻る理由』が解るとき、この映画の面白さに納得します。まさに『偶然と必然』・・・私は面白く観させて戴きました。
 映画って世間の評価に惑わされずに観ないといけないって、つくづく思う映画でした。今は大手レンタル店の店頭では見かけなくなってしまった作品です。
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