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オデッセイのFilm日記係のレビュー・感想・評価

オデッセイ(2015年製作の映画)
4.4
長いこと観られずにいたのだが、ようやく観ることが出来た。映画全体としての出来は期待通り良かった。SFサバイバル映画として、良い緊張感と感動的な結末を含むのみならず、程よく笑えて、科学の面白さに胸を躍らされ、明るい気持ちになれたという点で、素晴らしかった。

有人火星探査計画のメンバーであったマーク・ワトニーは、嵐による撤退の際に、暴風に吹き飛ばされて一時死んだとされたが、奇跡的に生きていた。だが、独り火星に取り残され、地球との通信手段もなく、酸素・水・食糧も絶対的に不足しており、尚且つ次に探査部隊が送られるのは4年後という絶望的状況。それでもワトニーは生き延びるべく、火星でのサバイバル生活を試みる。この映画では、ワトニーのサバイバル劇に加えて、地球に帰還する途中の、ワトニーを置き去りにしてしまった探査計画の他のメンバーと、地球でワトニーの救出に奮闘するNASAの、3つを並行して描くという設定だった。

まず何より評価したいのは、映像面である。特にワトニーが火星で過ごすシーンにおける火星の風景は、非常にリアルで、且つ美しく、編集で加工されていることを全くこちらに感じさせないものであり、物語にのめり込むことが出来た。

ワトニーを演じたマット・デイモンの演技も結構良かった。特に火星で遭難してから、自身の身体を自ら治療し、その後火星に取り残されたという現実を受け止めるまでのシーンには、ほとんどセリフがなく、表情だけで心情を表出していたのは素晴らしかった。ただ、そこは言葉にしなくても伝わるというところを、わざわざセリフで表現するシーンも多々あり、少々気になる部分もあった。

物語の展開として、開始5分程度でワトニーが火星に取り残されるのだが、映画を観る前から、主人公が火星に置き去りになるという設定は頭にあったので、非常にスムーズなテンポでストーリーを進めることが出来ていたと思う。

ワトニーの火星でのサバイバル生活のくだりでは、誰しもが学校で習ったような知識を応用し、目の前の問題を解決しながら過ごす姿が、とてもユーモアのある楽観的な風に描かれており、観ているこちらも自然と明るくなってしまう程であった。

個人的に1番印象的だったのが、ワトニーとその他の探査部隊のメンバーの関係性の描き方であった。物語が始まった段階で、既に彼らは一緒に過ごして数年が経過しているということを、互いの冗談を含む会話から読み取ることが出来た。また、ワトニーと他のメンバーが離れてからも、彼らは強い絆で結ばれているということを理解させられる場面が随所にあり、結果として終盤のシーンをより感動的なものにしていた。

NASAはワトニーを救出しようと奮闘するのだが、NASAが少々ブラック企業的なものとして描かれており、ワトニーの命を助けることを最優先としながらも、NASAに関わる人同士の会話から、ちょっとしたいがみ合いや皮肉が見え隠れする様が結構面白かった。ただ、中盤のNASAのシーンが少し長かった分、ストーリーのテンポが一時もたったかなという印象があった。

良いストーリー、良い人物描写、素晴らしい映像。この3つが揃っているという点で、いち映画としては申し分ない作品であった。どちらかというと、時間が経っても心に残り続ける部類の映画ではないが、1度観ると明るい気持ちになり、且つ目に涙を浮かべ得る(少なくとも私はそう)映画としては最良であり、気晴らしに観るにはオススメの1つだ。

面白さ:0.8 脚本:0.9 人物・演技:1.0
映像:1.0 音楽:0.7
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