YasuyukiMuro

この国の空のYasuyukiMuroのレビュー・感想・評価

この国の空(2015年製作の映画)
3.6
終戦間際の東京郊外(杉並周辺)。
19歳の里子(二階堂ふみ)は、母(工藤夕貴)と二人暮らし、そこに家族を空襲で無くした叔母(富田康子)が転がり込む。 隣家には、丙種で戦争に行かず妻子を田舎に疎開させた勤め人の市毛(長谷川博巳)が一人で住んでいた。

疎開で子供達の声が聞かれなくなった街、何気ない食事の風景、欲深い百姓への愚痴や、空襲で身寄りを失った身内への辛辣な言葉などなど…前線のドンパチではなく、リアルな銃後の生活が描かれる。

死が隣合わせで、将来の希望も見えない中、黙々と家事と役所勤めをする里子が、年が離れているとは言え、2枚目優男である市毛に惹かれる事は理解出来る。時世を考えれば不謹慎。でも刹那的だけど抑えきれない性への欲望もある。直接的、間接的な描写は、演出としては生々しいけど少々古臭い。境内の後ずさりとか、トマトとかは笑ってしまった(^_^;)
平時なら絶対に認めないという母親が、娘の気持ちを察し、隣の家への行き来を敢えて止めない、というのも、切なさだけでなく、何となく淫靡な感じが漂い痺れる。

ただ映画も悪くないけど、茨木のり子の詩「私が一番きれいだったとき」があまりにドンピシャで、言葉の力が凄くて、最後全て持って行かれだ感じでした。
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