カツマ

エレファント・ソングのカツマのレビュー・感想・評価

エレファント・ソング(2014年製作の映画)
3.9
ここには愛されたいと願う空虚な叫びが詰まっていた。1人の青年の心の中身を覗き込んでしまったかのような背徳感が画面を支配し、義務的な尋問はいつしか悲しみの扉へと手をかける。序盤の騙し合いのようなやり取りが、ピリピリとした緊張感に滑らかに移行していく様はあまりに見事。ドランの俳優としてのパワーに圧倒され、天才の感性の爆発をその身をもって体現した。場面転換がほとんど無いにも関わらず、俳優の演技力と巧みなストーリーテリングで画面に釘付けにさせられました。

とある精神病院でローレンスという医師が忽然と姿を消した。彼の失踪理由の情報を得るため、院長のグリーンはローレンスと深い関わりのある患者のマイケルを尋問することに。だが、マイケルは看護師達も手を焼く問題児で、グリーンの質問をはぐらかすばかりだ。グリーンの元妻でもある看護師長ピーターソンは、今日のマイケルのいつもとの違いに危機感を募らせる。マイケルはグリーンを煙に巻きながらも、次第に悲しみの真実を語り始めていく。

やはり特筆すべきは、グサヴィエ・ドランという人が監督だけでは無く、俳優としてもカリスマなのだということを感じさせる圧巻の名演だろう。小生意気さと繊細さを同時に演じ分け、背中にピタリと吸い付く悲しみの悪寒に怯えながら、心情そのものまでも完璧に具現化してみせた。
エレファントソングの本当の意味とは。最後のカットの美しさにハッとさせられ、教会の聖歌のように厳かな余韻がエンドロールと共に降りていきました。
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