三郎丸

ヴィンセントが教えてくれたことの三郎丸のレビュー・感想・評価

4.7
ヴィンセント(ビル・マーレイ)が何を教えてくれるのかなということで鑑賞!

ワタシは久しくビル・マーレイを拝見していなかったのですが、すっかりお爺ちゃん入っており時の流れを感じました…しかし、演技は若い時のちょっと気取った感じがなくなり、むしろ年取ってからのほうが良い感じですね。
本作は特に、
【顔】
でシッカリ魅せております!

お話は、
ひねくれ者の偏屈老人とひ弱な少年の交流を描いたヒューマン・コメディ。
酒とギャンブルに溺れる毒舌家の正に老ガイ!ヴィンセント(ビル・マーレイ)が、様々な人との交流を通して基本暴れまくる!
隣にシングルマザーのマギーとひ弱いオリバー君が引っ越してくるわけですが、ひょんなことからヴィンセントとオリバー君とのあざとくも金銭を要求して交わるシッター活動が始まり、笑いと心温まるヒューマニズム、いつしか父性も垣間見えまが、そんなヴィンセントが倒れてしまう…
【自分を生きること】
【身分や環境なんざ関係ない】
という気持ちのいい話です。

シングルマザーのマギー、ロシア移民のストリッパー・ダカとの交流を通して見えてくるものは、さり気なくマイノリティや社会的底辺の悲哀なんですが、ヴィンセントの妻の病気や自身の脳卒中と、人生に対する絶望感のようなものには胸を締め付けられる想いに囚われます…が、そのような人生を受け入れ、乗り越えながら毒舌をかまして生きていくヴィンセントに、感情を揺さぶられます。

オリバー君の学校で実施される
【聖人とは何か?】
のスピーチが作品の肝であり、監督も実生活において同様のイベントがキッカケでこの作品を思いついたみたいですね。(本作が監督デビュー作!)
オリバー君がヴィンセントの過去を遡ってスピーチするシーンには、涙腺崩壊でしたが、透けて見えてくるのは、ベトナム戦争の傷跡、そして多人種社会アメリカにおいての未だに蔓延る差別という問題。
哀しく苦しい人生を単に生き抜く話に終わらず、アメリカの問題点を提示した上で、ヴィンセントに差別なき世界の理想像(現代の聖人)のようなものがあります。

主人公のビル・マーレイの演技は素晴らしいというほかなく、ヤサぐれていながらも
【生きて、周りの皆を乱暴に(実は優しく包み込む)】
老いて尚、こういう役ができるビル・マーレイの凄さに脱帽です。(薬物好きそうな顔してますが…)
聖人授賞式でのビル・マーレイがとても印象的でした。素晴らしい!

オススメ処は、
主人公ヴィンセントは庭の手入れが趣味な設定なのですが、芝はハゲハゲの枯れ木枯れ鉢だらけ…
庭の手入れしながらタバコ捨ててるので、実はタバコ目的なんでしょうけど、ものすごいお粗末な庭なくせにまあまあコマメに手入れしている姿が面白いです。

人は、自分よりも下の存在を作り出して優越感に浸りたい輩がいますが、その人にしか出来ないことだってあります。知らぬは恥!シバきまわすぞ!

本作は、日々頑張りすぎて人生に行き詰まりを感じている方へ特にオススメです!
三郎丸

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