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ズートピアのFilm日記係のレビュー・感想・評価

ズートピア(2016年製作の映画)
4.5
ディズニー映画の中でも、更にはアニメ映画の中でも、自身の歴代上位に入る程印象的な作品だった。

あらゆる動物たちが平等に暮らす大都会のズートピアでは、どんな動物でも夢を叶えられる理想的な都市であった。主人公のウサギのジュディはズートピアで警察官になるのを夢見ていた。努力の末、ジュディは晴れて初めてのウサギの警察官となる。勤務初日、ジュディは期待を胸にズートピアの街に出るが、厳しい現実を見せられる。そんな中、ズートピアで起こっていた行方不明事件を追って、ジュディは街中で出会ったキツネの詐欺師のニックと共に街を調査したことをキッカケに、ズートピアの平和を揺るがす秘密に遭遇し、ズートピアに平和を取り戻すべく2人が翻弄するというストーリーだった。

この映画は子供が観ても大人が観ても楽しめるアニメ映画で、僕の中では一種のアニメ映画の理想形であった。(僕の中での一例はトイストーリー2・3)

子供の目線では、擬人化した動物のキャラクターのユーモア溢れる様は純粋に楽しめるものになっていた。SINGという映画と同様に、キチンと動物の特徴を捉えていて、且つ人間っぽさがよく出ていて、観ていて可愛く感じたり、おもしろおかしく感じたりできる。この映画はSINGに比べて、人間っぽさの描き方が良かった。例えば、ドーナツが大好きな虎の警察官のクロスハウザーのアゴの肉の感じとか、ミスター・ビッグの手下のホッキョクグマが神に祈りを捧げる様子とか、アフリカ水牛のボゴ署長がこっそりエアロビクスの動画を見ていて、それがバレて恥ずかしがる様子など、どれもリアルさを感じるし、それ故に愛らしさを感じた。

一方で、大人の目線では、映画全体のコンセプトが現代社会を風刺しているという深い見方ができる。ズートピアは、肉食動物と草食動物が平等に共同で生活する、ある種の理想都市として紹介されるが、実際には、お店や職場で、草食動物と肉食動物の、あるいは動物各種の差別が個人間で起こっているという光景を映していた。これはまさに自由の国を謳うアメリカの都市を風刺している。アメリカもあらゆる人種の人々が共同で生活しており、全ての人が平等な社会のように見えるが、実際には個人間での人種差別が未だになくならない現状をこの映画では風刺しているように感じた。他にも、ジュディとニックが全裸主義的な場所に行き、周りを見られないという場面があるのだが、これも現代社会におけるLGBT(ジェンダー問題)に通ずるところがあるように思われた。

映画全体の感想としては、とにかく面白くて笑いに溢れていた作品であった。特に、擬人化した動物のキャラクターの動物的要素と人間っぽさを上手く融合しており、それを上手く笑いに還元できていた。
個人的には、ナマケモノのフラッシュのくだりととがりネズミのゴッドファーザー的存在のミスター・ビッグのくだりはお気に入りだ。

ストーリー構成については、思いのほか展開が二転三転する物語設定であったが、それでも主人公のジュディを軸として、起承転結がしっかりしており、飽きることなくずっと楽しめた。
ただ、ストーリー中盤で黒幕が予想できてしまったので、その点では残念だった。(ただ、子供目線ではこれくらいがちょうどいいのかな~と思っているが。)

主人公のジュディは、とてもポジティブ思考で超努力家、諦めない気持ちが強く、何よりズートピアを愛する人物像であった。ジュディの気持ちの変化や行動は大体理解できるもので良かったが、結構単調だった。それでも、周囲の人物の心情の変化で上手く抑揚が作れていたと思う。ただ、一部涙のシーンがストレート過ぎて、少々押しつけがましく感じた。

ジュディの相棒役のニックがこの映画の中で1番好きになれたキャラクターだった。まさにキツネ!というようなずる賢さとクールさが主だが、肉食動物からの偏見と差別を受けて夢を諦めたという過去を持っており、詐欺師というキツネらしい生き方をしてきたが、ジュディとの出会いをキッカケに、生き方を変えていく姿が奥深く描かれていて、とても良かった。途中ジュディと仲違いする心情の変化もよく理解できた。

映像面では、子供のみならず、大人でもつい笑みが漏れてしまうほど、可愛さの要素が多かった。映像による面白さやユーモラスに富んでいて優れている映画としては、今年観た映画の中では1番だと思う。

音楽についても結構いいところがいくつかあった。特に、ジュディがズートピアに向かう場面で、'Try Everything'という歌がかかっていた。個人的に映画の最中に歌付きの音楽がBGMでかかると、無くてもいいんだけどなぁ~とよく思うのだが、この場面では、ジュディがiPodで音楽を聴いており、ある意味ジュディにしか聞こえていない音楽だという形式にすることで、ジュディの視線でズートピアの街並みを見やすくなっていたという点で、BGMを有効活用出来ていたと思う。

現段階では、大人になってから観たアニメのなかでは、トイストーリー3、千と千尋の神隠しに次ぐ出来だった。(最近あまりアニメ映画を観ていないので偏りがあると思うが…。)

面白さ:1.0 脚本: 0.8 人物: 0.9
映画:1.0 音楽:0.8
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