玉割り人とは、遊郭で遊女にムフフな寝技を伝授するプロフェッショナル。時には遊郭の掟を破った者に処罰を与えたり、遊女が誘拐されたらネゴシエーターしたり何でも屋。(嘘らしい)
500万の東映のド底辺の製作環境だったみたいだが、そんな貧乏臭さは微塵にも感じさせない作り。
田中陽造さんの玉割り人として「女」を捨てたゆきが、アナーキストに出会って「女」を取り戻し、デ・パルマの「カリートの道」かよ？！と思う展開まで70分に凝縮した脚本と牧口監督の余計なシーンはないはずの必要なことだけなのに、風情ある見せ方がプログラムピクチャーをはみ出す感じが豊かな映画に思わせる。
セットで撮影できない分の路地や駅でのロケ地のドはまり感が素晴らしい。霧みたいな雨や雪なんかも降ったりして画面は飽きることはない。

本来のエロい目的としての映画としては物足りないないが、潤ますみさんの乳だけはボールみたいで存在感十分。
川谷拓三さんも相変わらず落伍者の役が絶品！

金沢が舞台の2作目はますみさんよりストーカーの中島葵がメイン。三味線持った立ち姿にヒステリックな中島葵サンさすがの貫禄でやたらと怖い。輪姦されたあとの白ガムテープの間から流れる涙の量が半端ない。帆立のヒモかじった浮浪者の拓ぼん。ますみさんは冒頭に卵割りのデモンストレーションしたあとはほとんど仕事してない。治りかけの刀疵に噛みついて血が滲むところ痛々しくて生々しかった。

1976年製作公開。原作松森正。脚色田中陽造。監督牧口雄二。

/喘ぐ唇、くねる裸身　みみず千匹、三段締め……ゆきは廓の娼妓に性技を仕込む女師匠　男泣かせの名器が次から次へとつくられる/公開時のポスターの惹句です。ゆきは娼妓に生卵を蜜壺に挿入し割りなさいと命じます。はて、男がどのような快楽咽び泣くのか、それは知りません。

その男泣かせの名器を作る玉割り人ゆきが、舞台を京都から金沢に変え今回も男に惚れます。その男にはまとわりつく女、彼がちょっとした縁から一度だけ情をかけた中島葵がいます。その日から中島葵は身もこころもその男坂口徹の虜になったのです。前作の流れから、本作で死ぬのはこの男だな、とわかってしまいます。

母の命日に墓参していたゆきの耳に気持ちの良い謡が入り込んでくる。その謡の主と話をしていると紋黄蝶が舞う。男はむんずとその蝶を捕まえ握り殺そうとするが、蝶は人の魂を運ぶという、母の命日に免じて赦して欲しい、というゆきの願いに、それじゃあお前を抱かせろ、とその場で媾います。無論、常にまとわりつく中島葵がその交情を見逃すはずがありません。

喘ぎもしなければ、くねりもしないゆきのからだですが、蜜壺の中はふくよかだったのでしょう。男はゆきにぞっこんとなります。その男、夕月楼の楼主坂口徹、東京で謡曲の天才と誉めそやされたものの金沢に帰省中、悪戯ごころでひとりの謡曲師の自尊心を打ち砕き死に至らしてしまう。その娘中島葵、そしてゆきとの三角関係が始まります。

坂口徹には妹がいて、かわいいお顔でなかなかの天然な性悪。逢引きを重ねる帝国陸軍将校からいつ一緒になれるんだと迫られると、お兄ちゃんが立ち直って東京に戻らないと、それにはあの付きまとう中島葵が邪魔なのよ。将校は、仲間を募り中島葵を拉致し凌辱の限りを尽くす。

坂口徹の→はゆきにしか向いていないので、相思相愛のふたりは祝言をあげる。そこに、中島葵が女郎になったという報せが入り坂口徹は彼女の下に向かう。ゆきと東京に行く/おしあわせに/せめてもと金をわたそうとすると/もう一度抱いて/お祝いにと差し出されたグラスの酒を飲み干す坂口徹と中島葵。

無理心中、日本の夏。

国立映画アーカイブ　逝ける映画人を偲んで 2021-2022（監督/牧口雄二）　にて

• #あんたさんは、女を生殺しにするお人です