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スノーデンのNMのレビュー・感想・評価

スノーデン(2016年製作の映画)
4.0
「政治家に迎合せずとも愛国者だ」

世界中のメールや電話が国家組織に監視されていたりして……という誰もが聞いたことのある陰謀論が事実であることを告発した男の物語。このニュースを詳しく知らない人は一見の価値がある。

現れた若い男、エドワード・スノーデン。険しい表情だったがよく見ると柔和で賢そう。ある情報をマスコミに渡そうとしている。当日中に新聞に掲載できないとすぐそこまで追っ手が迫っている。

スノーデンは高校中退ながら天才的頭脳の持ち主で、CIAの試験もトップ合格。保守派だがリベラル派とも楽しく会話ができ、感情や表情をきちんとコントロールできる。冗談も言うしガールフレンドもいる。

CIAに勤務するうち機密情報を得る。
国家は、国民の非公開情報まで令状なしで全て把握できるシステムを持っていた。テロを防ぐ目的だが、例えば後ろめたい情報を指摘して脅したり逮捕したりも理論上できる。過去や親戚、友人を辿れば叩かれて埃の出ない人などいない。
更に電源がオフの個人宅PCのカメラを作動させるシステムも。プライバシーは筒抜け。
ついにスノーデンはついていけなくなり辞職する。

オバマ政権に変わり、NSA(アメリカ国家安全保障局)で働き始めるスノーデン。だがそこでもテロを防ぐ名目で結局はアメリカが世界で優位に立つためのシステム(PRISM)構築が主だった。世界中のSNS、通話記録、会話とその映像、相手先もそのまた知人の情報も。全ての携帯電話記録にアクセスできた。

スパイなど国家機密を扱う職業によくあることだが、恋人や夫婦関係がこじれるのが悲しい。彼自身が望んだ職業ではないのに、人生が犠牲になっていく。話し合いたいけど話すわけにいかず、相手は隠し事をされている、愛されていないと感じ、距離が離れてしまう。

システムについて疑義を唱えたり告発を試みた者は次々と圧力をかけられていく。上司らは保身と出世しか考えない。優秀なスノーデンはどんどん大きな仕事を任されてしまう。

あまり感傷的な描写は多くなく、事実を淡々と伝えている印象。無駄は省かれている。まさにドキュメンタリーを観ているよう。

面接官で教官役のリス・エヴァンスが何をしても様になっていてすごい。普通のグレーコート、マフラー、ハットなのにスターのオーラが隠しきれず目立つ。貴族とか皇帝とかの役もはまりそう。
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