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皆殺しのバラッド メキシコ麻薬戦争の光と闇の東京キネマのレビュー・感想・評価

4.0
ナルココリードというメキシカン・ラップの歌手、エドガー・キンテロ(アメリカ側)と、フアレスの警察官、リチ・ソト(メキシコ側)を対比して描くメキシコ麻薬戦争のドキュメンタリー映画。タイトルは仰々しいですが取材も構成も素晴らしく、屍体はゴロゴロ出てくるものの嫌悪感はあまりありません。

本来、米墨国境を経済的文化的に遮断するしかないのでしょうが、こういった米国側のメキシコ系若者に支持されるラッパーは飽くまで現状肯定。むしろ、ヤクは最高、カルテル格好いい、とやることで人気も出て金にもなる。従って、間接的に米墨麻薬シンジケートの応援団という構造になってしまっているという話。

そもそも貧農しかいないエリアが、経済的に圧倒的な差のあるアメリカと、NAFTAのような自由貿易協定なんか結べば、貧しいメキシコ・サイドの経済は壊滅するに決まっています。工場が出来れば農民は農地を捨てるし、ウォルマートが出来れば現地小規模商店は潰れてしまう。その後、リセッションが起きると北米資本の工場や商店は簡単に撤退してしまうので、その後は働く場所が全くなくなって、エリア一帯が無職化する。だったら、モトシンカカランヌーな麻薬でも、となるのは当たり前です。

で、実際、麻薬ビジネスの経済的連携を遮断するように、米墨両サイドの政府も地域住民も協力してやっているのですがなかなか上手くいかない。その理由がこういった麻薬を肯定するようなラッパーいるからなんじゃないか、というのがこのドキュメンタリーの仮説なんですが、でも本来の理由は、アメリカ側が麻薬を大量に買って、そして、大量の武器を売るんで、米墨両方でビッグビジネスの循環が出来上がってしまったからですよ。問題の多くはアメリカ側なんです。要するに、可哀想だからメキシコ不法移民を自由に入れてやれ、という人たちは、飽くまで麻薬ビジネスは現状維持のまま、このシンジケートを守りたいアメリカ側の人たちなんじゃないのかって事です。つまり、麻薬を人権にすり替えている。だから、トランプの言っていることは正しいんですよね。。。
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