マヒロ

アリスのままでのマヒロのレビュー・感想・評価

アリスのままで(2014年製作の映画)
4.0
言語学者で大学教授でもあるアリス(ジュリアン・ムーア)は、医者の夫(アレック・ボールドウィン)と共に三人の優秀な子供たちにも恵まれて幸せに暮らしていたが、ある日突然日課のジョギングの最中に走り慣れた道が急に分からなくなったり得意料理のはずのお菓子のレシピを忘れてしまったりする。不安になって医師の診察を受けると、彼女は若年性アルツハイマーであると診断される……というお話。

人間が持っている物の中で、他の者が唯一干渉できないものが脳の中の記憶とか知識であると思っていたんだけど、アルツハイマーという病気はそこすら蝕んでいくという恐ろしいもので、今作のアリスのように人一倍勉強して知識を得ていた人であれば尚更ダメージが大きいはず。
アリスが罹ったアルツハイマーは希少な遺伝性のあるタイプで、彼女が父から受け継いだように子供たちにもその遺伝子が受け継がれてしまうことがあること、人によって進行度が違うが知能の高い人ほど進行が早い傾向にあることなど、病気について知らなかったことを色々知ることができた。

変に盛り立てることなく淡々と事象を描いており、聡明なはずのアリスが徐々に様変わりしていってしまう描写がジュリアン・ムーアの演技力も含めてかなり辛いものがある。実話を基にしているからというのもあるんだろうけど、協力的だったと思ったのにジワジワ心が離れていく様が見て取れたり、逆に仲が良くないように思えていた人が大変な時に手を差し伸べてくれたりと周りの人の反応も実にリアル。
いわゆる「難病もの」だけど、家族の絆だのなんだのという感動路線を往くのではなくて、あくまで病気に立ち向かうことになった1人の人間の物語として地に足付いた演出が心地良く、一方で無差別に襲いくる病気の恐ろしさもしっかり描いているバランス感覚の良い作品だった。

(2020.174)
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