ラウぺ

ボーダーラインのラウぺのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
4.3
大まかに言ってメキシコの麻薬カルテルを壊滅させようとするアメリカの司法当局の仁義なき戦いを描くというこの映画、主演のエミリー・ブラントがカルテル撲滅の合同捜査にスカウトされ、ジョシュ・ブローリンの違法捜査まがいの手法に疑問をもつ、という筋書き。
違法まがいの手法に激しく抵抗するエミリー・ブラントに、問題の本質を分かってない甘ちゃんは黙って見てろ、的なジョシュ・ブローリンとの対立は物語が進行するに従って見ている方がイライラしてくるのですが、実はこの映画にはもう一つの重要なプロットがあって、後半はそちらの方が要素としては重要になってくるのです。

日本語のタイトルは「ボーダーライン」ということで、アメリカ・メキシコ国境の意味と法律すれすれのボーダーラインを掛けた妙味のあるタイトル・・・といいたいところですが、原題は「Sicario」、スペイン語で殺し屋のこと。
何故タイトルが殺し屋なのかというところは、見てのお楽しみということで。
見終わって、なるほどと思わせる決着の付け方は、やはり原題の方がこの映画の内容に相応しいものだと思いました。

この手の巨大過ぎたり、根が深過ぎな組織犯罪ものは最後にモヤモヤしたものが残る映画が非常に多いのですが、納得のいく解決かどうかはともかく、この映画なりの一応の落とし所に行き着くところが映画的にまとまった印象を持ちます。

重苦しい題材らしく、冒頭から画面から伝わる緊張感が半端なく、最後まで緊張感が連続する映像は大変見応えがあります。
車列がただ走ってるだけを淡々と映し出す映像にこれほどの緊張感を与える技は特筆に値すると思います。
撮影はロジャーディーキンスで、なるほど、この緊張感ある画作りは合点がいきました。

音楽はネオ・クラシックの騎手のひとりとして頭角を現していたヨハン・ヨハンソンで、2018年に惜しくも逝去。
本作の音楽は彼の作品の中でも一際彼の個性が際立っていて大変素晴らしかった。

監督のドゥニ・ビルヌーブはこのあと「メッセージ」「ブレードランナー2049」、脚本のテイラー・シェリダンは「最後の追跡」「ウィンドリバー」と大作を手掛けており、この作品がただならぬ出来栄えなのも、後から考えれば、この奇跡のようなスタッフの作品ならばむべなるかなというところです。
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