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ネオン・デーモンのkuuのレビュー・感想・評価

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)
3.6
『ネオン・デーモン』
原題The Neon Demon.
映倫区分R15+.
製作年2016年。上映時間118分。

ニコラス・ウィンディング・レフン監督がエル・ファニングを主演に迎え、究極の美を追求するファッション業界に渦巻く欲望と狂気を、きらびやかに彩られた独特の映像美とスタイリッシュな音楽に乗せて描いたフランス・アメリカ・デンマーク合作サスペンススリラー。
モーテルで働く男ハンク役にキアヌ・リーブス。

トップモデルを夢見て故郷の田舎町からロサンゼルスに上京してきた16歳のジェシー。
人を惹きつける天性の魅力を持つ彼女は、すぐに一流デザイナーや有名カメラマンの目に留まり、順調なキャリアを歩みはじめる。
ライバルたちは嫉妬心から彼女を引きずりおろそうとするが、ジェシーもまた自身の中に眠っていた異常なまでの野心に目覚めていく。

今作品の特徴は、その色彩表現にあると思う。
ニコラス・ウィンディング・レフン監督は雑色のインタビューで、
『自分は実は色盲で、コントラストと原色しか感じられない』
と語ってました。

扨、今作品は、まばゆいばかりに光る微妙に不気味なジャケットポスターで知ってから、かなりの時間リストに入ってました。
云うまでもなく、視覚的なレベルじゃ素晴らしい作品でした。
深く考え抜かれた美学に貫かれてたし、レフン監督の映画を特徴づけるものなんかな。
暗闇とロサンゼルスのダウンタウンのネオンに包まれた今作品は、映画的な驚きを与えてくれました。
脈打つようなシンセ音楽にのせて、この映画は70年代後半から80年代前半のホラー映画を思わせ、『サスペリア』との比較は当然あるやろな。
また、もう一つ善かった点はとして、同様に豊かな象徴性と概念です。
前提条件が基本的に恐ろしいし、ねじれたクライマックスと結末に向かって突進するときに、災いが降りかかってくるのを感じることができた。
今作品は、厳しい(そして不気味な)現実を満たす後ろメタファーの強力なカクテルである最後の声明において、満足させ、冷ややかにすることに成功しているし、映像的、テーマ的な活力に見合わないのは、人物描写においてであるかな。
ファニングが演じた、夢見がちで神経質なティーンエイジャーは、ランウェイの寵児であるけど、少しハードルが高いように感じられた。
その理由のひとつは、彼女の無遠慮な演技にあるかな。
最初は説得力があるが、映画が勢いを増すにつれて、徐々に腰が引けてくるように感じた。
また、彼女を取り巻くキャラが、彼女の4分の1程度の出演時間にもかかわらず、非常に生き生きと描かれていることも一因やと思う。
執拗なメイクアップアーティストを演じるジェナ・マローンは欲望と憧れに満ち、ベラ・ヒースコートとアビー・リーはニュアンスと技巧に富み、完全に魅了される驚異的な控えめ演技を披露している。
しかし、第2幕に突入すっと、彼女のキャラは徐々に、女性たちが取り囲む空虚な存在になり、彼女からは見せ場が奪われちまう。
これはレフン監督の意図的なテーマ設定なのかもしれへんが、アンバランス感が残る。
これは、ファニングのキャラが埋め込むべきでありながら、その機会が全くない感情的な下地に対して直感的でないように思われる。
それでも、今作品は価値のある作品やと思うし、より成熟した実験的ホラーの1つであることは間違いなと思います。
今作品は、暗いテーマを美しいパッケージで表現することに成功した、何よりも美的な業績である。
ファニングのキャラ設定は、彼女が見栄を張るようになるにつれ、少し不釣り合いになっていくが、幸いなことに、彼女が周囲のキャラから遠ざかっていく過程で、目と耳で味わうべき視覚的・象徴的素材が十分用意されている。
この陰りは、確かに物語の中で起こっていることに対してテーマ的には適切かもしれへんが、それがこの映画の感情の核を損なっているように感じざるを得なかったのは事実かな。
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