2009年『ラブリー・ボーン』
シアーシャ・ローナンを初めて見てから
もう、6年も経ってしまった
殺人鬼のスタンリー・トゥッチに人知れず
殺されてしまう少女を演じた あどけない
笑顔や泣き顔は記憶の中で薄れてしまった
その4年後に『グランドブダペストホテル』で見た彼女は少しだけ大人びてまっすぐな眼差しが印象的だった キュッと結んだ口元に知性と少しの強情を滲ませていた
1950年代のアイルランド
美しい姉の期待や励ましを受けて
アメリカへひとり旅立つことを決めたエイリシュ(シアーシャ・ローナン)は前途洋々と船に乗り込む 同じアイルランド系の移民の寮の仲間と共に勉強や仕事に励む
寮母と寮の仲間たちとの食事シーンを
幾度も見せられて辟易する
寮母の厳しい眼差しと時折見せる笑顔に見覚えがある ハリーポッターのロンのママ?
手料理をフォークとナイフを使い口へ運ぶ仕草や背筋をピンと伸ばした姿
何度も見せられたその食事風景には
ちゃんと意味があったのだ
エイリシュの成長が会話から窺える
聡明なエイリシュは大学でも仕事でも
次第に慣れて上司からも褒められるようになる過程は微笑ましい
上司に咎められ涙を浮かべる姿が
あっという間に過去に変わって行く
アメリカの暮らしに慣れた頃イタリア移民系のトニー(エモリー・コーエン)と出逢い恋に落ちる まではお決まりのシークエンス 戸惑いから恋の魔法にかかってからは
寂しさも手伝ってかけがえのない存在になるトニー (トニー役のエモリー・コーエンが薄っすらとジョニー・デップのクライベイビーの頃に面影が……(゚ω゚))
初めて恋の喜びに身体中を震わせ
新しい感情を受け入れる
同時に切なさも知るのは
ある知らせがエイリシュの元に届いてからだった
故郷に帰省したエイリシュは
美しく都会的に洗練された女性として
皆の注目の的となる
そしてトニーとは正反対のジム(ドーナル・グリーソン)と出逢う
ふたりの男性の間で揺れるエイリシュ
の心情がとても丁寧に描かれる
家族や友人に囲まれ楽しい日々を過ごす内にジムとも急速に親しくなり
このままここに留まって欲しいと
告白される
トニーの面影が薄れて行く中
何処にでもいる嫉妬や羨望の入り混じった
中傷に我に変える
狭い故郷の小さい街では噂話は
いたずらにエイリシュを傷つける
やがて未来を見極めて
過去の自分を助けてくれたあの女性
のように精一杯の言葉をかける
まるでエイリシュが旅立つ日のような目の少女は憧れのまなざしを送る
エイリシュの頷く顔を見て
いつの間にか大人の女性へと成長した
姿を目撃するのだ
そして彼女の選択を祝福し
まるで親友に声をかけるように
スクリーンを見守る自分がいた