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EDEN/エデンのshxtpieのレビュー・感想・評価

EDEN/エデン(2014年製作の映画)
3.5
うーん、なんなんでしょう、このドラマとしての牽引力のなさは。とても期待していただけに、残念です。フレンチ・ハウス・シーンを駆け抜けた DJ (フレンチ・ハウス・シーンのただ中でなぜかシカゴ・ハウス/ガラージ一筋)の栄光と挫折、というこんなにもおもしろそうな題材を扱いながらも、この映画が語るドラマに最後まで熱中することはできなかった。残念ながら。

なにが問題だったのだろう。脚本か、あるいは虚飾を排したクールな演出のためか。どちらも、だろう。こんなにもアツい音楽とそのシーンを扱いながらも、登場人物たちからいささかたりともアツさを感じられない演出、日常会話となんら変わらない些細なことばかりを話す会話(まあ、リアリスティックではある)、どこまでもプラスティックな眼差しのカメラ……。それがゆえに主人公ポールが味わう栄光の甘美さも、挫折の底知れない苦悩もまるで画面からは伝わってこない。いや、そもそもこの映画の中で、ポールが成功の栄華に酔いしれ、めちゃくちゃな資金繰りとコカイン中毒に苦悩し、挫折に絶望感を抱いている描写などあったのだろうか。淡々と、ただ淡々とポールは金を借り、コカインを鼻から吸い込んでいる。

その代わりに映されるのは、元カノを忘れられなくて女たちの間で右往左往し、二股をかけるクソ野郎ポールの姿のみ(笑)。まあ、そんなもんか、と適当にやりすごされる程度の「栄光と挫折」しかこの映画は描けていない。ましてや(登場人物たちの)音楽に捧げる愛と情熱など、まったく語られやしない。

ダフト・パンクはちょくちょく出て来はするものの、大筋にはあんまり絡まない。“ダ・ファンク”だって“ワン・モア・タイム”だってもっとドラマティックな使いかたが出来たでしょうに。マスターズ・アット・ワークのくだりとか、どういう意味があったんだろう。

クールでおしゃれな映画では、ある。でも、映画的な起伏はまるでない。よかったのは前半 20 分のみ。ダンス/エレクトロニック・ミュージックに敬意を表して 3.0 。ドラマ映画としては 2.0 。

とはいえポーリン・エチエンヌはかわいかったなあ。一方でグレタ・ガーウィグはずいぶん老けて見えた。って、いま調べてて気づいたんですが、後半のポールの恋人、アラブ系だなー、なんて思ってたらファルハディ『彼女の消えた浜辺』の主演、ゴルシフテ・ファラハニだった! なんか見覚えあると思ったよ。あっ、ヴァーホーベンの映画がどうのこうのと言っていたところはおもしろかったですね。
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