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スター・ウォーズ/最後のジェダイのikustatinoのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

「スターウォーズ 最後のジェダイ」ルークの衣装にみる個人的考察。ルークの衣装の色は常に彼の心情を映していた。

「孤島での生活」

物語の冒頭、ルークはアイボリーの道着にグレーのローブを被り、洗練された修道士のような印象で登場します。
しかし、以降ずっと暗い栗色をしたニットのパーカーに黒のレインコート的なものを被り、劇中場面の多くは孤島の漁民の日常着といった格好のままでした。
これは、カイロレンの悪意を知って思わずライトセーバーを構え、ダークサイドに飲み込まれかけた自分を落第者と考えるルークの一つの戒めと捉えられます。それゆえにジェダイオーダー最後の生き残りとしてオビ=ワン、ヨーダから受け継いだ責任を全うすべく経典を燃やそうとする場面や最後の座禅などの重要なシーンでは正装をしたと思うわけです。
そう考えると今作におけるルークは終始勇敢な騎士というよりは島で慎ましく祭事を行う僧侶のようだったなと思います。


「クレイトでの最終決戦」

クレイトの秘密基地に命からがら逃げ込んだ反乱軍でしたが、ファーストオーダーに包囲され絶体絶命!そこに現れたのは「EP6 ジェダイの帰還」を思わせる黒い道着に黒のローブを被ったルークでした。
実際には質量を持った思念体であり、意識だけの存在だったからこそ、その姿により顕著に彼の心の在りようが反映されたのではないでしょうか。
レイと出会い、ヨーダからの啓示を受けてもなお「自分はダークサイドの誘惑に勝てずベンを堕天させた不完全な存在…」という自己否定の気持ちがあの黒衣に表れていたとしたら、悲しい葛藤に涙腺が緩みます。
そして渾身の力を振り絞って幻影を作り出す本体のルークは、ジェダイマスターとしての最後の務めを体現するかのような白衣で座禅を組んでいました。
白と黒2つの心を同時に抱きつつそれを受け入れ、ある種の達観に到達したルークだからこそ、この生涯の葛藤と昇華を象徴するような荒業を可能にできたのでしょう。


「2つの太陽を眺めつつ聖人として消える」

ルークが何故実際にクレイトに行かず、幻影のみを送ったのか…その理由もこのアンビバレンツな心の有り様にヒントがあるように思います。
不完全な自分への戒めとして島を出ない決断をしたルーク。スターウォーズ史上自他共に多くの犠牲を払って築き上げた平和が壊されていく間ずっと引き篭もっていたのですから、そもそも並大抵の覚悟の引き篭もりではなかった訳です。「絶大な力を持つ自分がダークサイドに転びかねない」その事を最大の脅威と考えたのかもしれません。
ジェダイ最古の経典を祀りつつ、最後のジェダイとして島で孤独に朽ち果てるという彼の誓いが根本的に変わっていなかったとしたら、実の妹の命の危機であっても島を出る訳にはいかない。
それでもカイロレンを生み出してしまった責任の精算として、かつての弟子に自分の最後の教えを残そうと考えたのではないでしょうか。
「死して尚私は君たちと共にある」
初志を貫徹し、2つの夕日を眺めながらルークはフォースと一体化します。
白の衣装を纏い聖人として…。


「引き篭もりは伝統芸」

引き篭もって孤独に息をひきとろうとするのはジェダイオーダー伝統芸の1つでもあります。途中で脱引き篭もりしちゃったオビ=ワン、引き篭もりながらも弟子のルークに看取られたヨーダと比べれば、ルークはかなり柔軟に現実に対応しつつ孤独に逝ききった形です。
賛否両論ある今作でのルークの扱いですが、彼は常に多くの事に心を砕き、思慮に思慮を重ねて行動していたと僕には思えます。彼が新しい時代状況に掻き消されるように世を去ったのはとても悲しい事でした。
けれども父が、そして偉大な師匠達がそうであったように後ろ暗い過去と決別し未来に種を蒔いたのは、ジェダイオーダーとしての彼の偉業ではないでしょうか。

弟子の修行を完遂できないのもジェダイオーダーの伝統芸…レイ頑張れ!
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