マヒロ

スター・ウォーズ/最後のジェダイのマヒロのレビュー・感想・評価

2.5
前作がスターウォーズというシリーズの「お決まり」みたいなものをふんだんに詰め込んだ作りだったのに対して、今作はそのお決まりをことごとく破壊して、全く違うものを作り出そうとしているという、正反対の性質を持った映画が出てきてビックリした。「自分が好きなスターウォーズ」を作りたかったJJと、「自分が考えたスターウォーズ」が作りたかったライアン・ジョンソンの取り組み方の違いなんだろうか。

メインタイトルでも使われていた「赤」の差し方はなかなか良くて、スノークの部屋と彼の護衛のドギツイ赤は明らかに異質感あったし、塩の星でひとしきり戦闘が終わった後、塩が吹き飛んで赤黒い地表が丸見えになっていたのは、血が広がっているようで不気味さすらあった。中盤のチャンバラシーンは、スマートな斬り合いではない泥臭い殺し合いといった勢いがあって素晴らしかった。
完全にいじられキャラと化していたカイロ・レンも今作ではかなり良いキャラに変貌していて、彼がある意味覚醒するシーンは今作で一番の見どころだったと思うし、今後どうなっていくのかが一番気になるキャラクターになった。

しかしどうにも「お決まりの破壊」というところに執着し過ぎているような感じもあって、ジョンソン監督の意思なのかディズニー側の意思なのかは分からないけど、とにかく「伝統を捨てる」ということが映画の中でも繰り返し語られる。
伝統とは即ちジョージ・ルーカスが作り上げてきた旧6作のことで、とにかく厄介払いをするかの如く切り捨てようとしているので、なんだか違和感すら覚えた。新しい世代=レイやカイロ・レン達の物語を作り上げていくのは良いことだし、魅力的なキャラクター達だから全く抵抗は無いんだけど、だからといって旧作のキャラクターをものすごく雑に殺したり(脇役とはいえ)するのはなんか違うんじゃないかと思った。

もう散々語られていることだけど脚本のぐだぐだっぷりも酷くて、敵も味方も真面目に戦争やってるとは思えないほどのトンチキだらけで、見ていて力が抜けてしまう。特にフィン、ポーの続投組と、ローズ、ホルド(ローラ・ダーン)、DJ(ベニチオ・デル・トロ)の新規組の行動が、戦犯と呼んでも間違いないくらいいたずらに死人を増やしていて唖然としてしまった。流れ的に反乱軍側の戦力がどんどん削られていく必要はあったのかもしれないし、いくら頑張っても報われないという戦いの無情さみたいなものを演出したかったのかもしれないけど、それにしては全体的にギャグがやたら多くて雰囲気が弛緩しているので、皆真面目にやってないようにすら見える。敵側もパルパティーンやベイダーのようなカリスマも、ダースモールのようなイカした武闘派も不在で、今作で一気に底が知れてしまった感があるので、恐らく時勢ジャンプがあるであろう次回によっぽどの戦力補強がないと盛り上がらないんじゃないかと思ってしまう。

ロケーションも気になって、ルークのいる島とカジノの星は、遠い遠い銀河の星にはどうにも見えず、「地球のどこか」にしか見えない。ここは感じ方の違いだろうけど、今までどの作品でもそんなこと思ったことなかったので結構驚いた。

旧三部作世代でない自分からしたら、みんなの知っている『スターウォーズ』サーガの新しい立ち上がりに参加できることを喜ぶべきなんだろうけど、それ以上に首を傾げたくなるようなシーンの連続で素直に楽しめなかったガッカリ感の方が強く残ってしまった。手堅いけど冒険心が殆どない『7』と、革新性はあるけど作りがぐにゃぐにゃな『8』、両方のいいところを併せ持ったものが『9』として出てきてくれれば最高なんだが。
JJがそれをやってくれるかというとちょっと微妙だけど……。

(2017.157)[41]
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