きよぼん

さらば あぶない刑事のきよぼんのレビュー・感想・評価

さらば あぶない刑事(2016年製作の映画)
5.0
またやるのか!

あぶない刑事の映画が作られるという発表がされるときの自分の気持ちは、いつも「またやるのか」。これはまた新作を作ってくれるのかという喜び。それと反対に、4作目以降コメディ色が強くなりすぎたアブデカは、面白いんだけどもういいんじゃないか、という苦い思いの相反するふたつの気持ちがあった。

今作の舞台挨拶の動画で舘ひろしから「最近は荒唐無稽になりすぎていた。今回、目指したのは原点回帰。ハードボイルドでファッショブルでスタイリッシュな1作目に戻りたかった」という言葉を聞いて、涙が出た。自分が好きな世界を制作者側が大事に思ってくれていたことが嬉しかった。

もちろん4作目からのコメディノリを否定したいわけじゃない。人の意見をきいて、いろんなことにチャレンジしてみる時期もきっと必要だ。でも、若い人にはわからないかもだけど、ある程度時間がたつと「自分の好きなことってなんだろう」と思い出して、好きなことを大切にしたくなる。長年続いたシリーズで、最後の最後に「好きなこと」への矜持を作品という形でみせてくれた。いろいろ方向転換しながら、あるべき場所に着地することができた。それがこの作品のかっこよさ。

というか、久しぶりに見直したんだけど(21/11/14)面白かった!原点回帰とはいえ、作り手のひとりよがりになってない。笑いの要素はもちろん、いろんなところへ目配りされてる。これがなくちゃの柴田恭兵のランニングと舘ひろしのバイクアクション。若いときほどはじけちゃいないけど、定年前の落ち着いた二人の感じもいい。異様な存在感を放つ銀髪の悪役・吉川晃司。見せ場あり、サービスありの最後を飾る作品にふさわしい。

もう「またやるのか」と思うこともない。だけどいつまでも、きっとこの作品は自分にとって特別だ。
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