鍋レモン

怪物はささやくの鍋レモンのレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
4.3
⚪概要とあらすじ
パトリック・ネスによる小説を、『インポッシブル』などのJ・A・バヨナ監督が映画化したダークファンタジー。

母親が重病に侵されている13歳の少年コナー(ルイス・マクドゥーガル)は、毎晩悪夢にうなされていた。ある夜、彼の前に樹木の姿をした怪物が現われ「わたしが三つの真実の物語を語り終えたら、四つ目の物語はお前が話せ」と告げ、さらにコナーが隠す真実を語れと言う。コナーは断るが、それを境に夜な夜な怪物が現れるようになり...。

⚪キャッチコピーとセリフ
“その怪物が喰らうのは、少年の真実-。”

「人間は複雑な生き物だ」

⚪感想
1人の少年を中心に描くダークファンタジー。

病気の母親、学校のではいじめられ孤独な少年。その少年の前に奇妙な怪物が現れ、彼の話す3つの物語の交流から真実が紐解かれる。

原作は児童文学であるものの映画自体はかなり大人向けな気がする。

世界観の色味が良い。
現実世界は寒色が中心で男の子の服に少し赤が使われている。怪物の世界は暗いながらも燃えるように熱い炎が使われている。物語の世界は色とりどりだったり水彩絵の具を垂らしたような演出で綺麗。
オープニングは物語の世界と似ていた。

『キングコング』から始まり、怪物が話す物語のでは善や悪、正義、矛盾、考えと行動などが語られている。
ただの物語のようで一つ一つがかなり考えさせられる。

主人公のコナー役のルイス・マクドゥーガルが可愛い。まつ毛長いし、少しグリーンな瞳とくっきり二重。涙を浮かべた時が映える映える。
とにかく演技力が高すぎてコナーが苦しい時はこっちも苦しくなった。俳優さんの演技が上手いと不思議と物語も面白い。

コナーの母親役のフェリシティ・ジョーンズは病気な役だけ合ってかなり痩せていてびっくり。背骨が出ていたり頬が痩けていたりとメイクだけじゃないと思うんだ。
祖母役はシガーニー・ウィーバー。存在感強い。

怪物の声は私の大好きなリーアム・ニーソンが務めていたんだけど深みのある怖いけど優しい声。胸に響く。
モーションキャプチャーも務めているそう。調べてみたら男の子を模した人形と撮影していて可愛かった。
今回は字幕で観たけど吹き替えは石塚運昇さんが怪物の声を務めているから観たいなぁ。

怪物の目は変わっていないのだろうけど最後の方は本当に優しくて優しくてそれだけでも泣きそうになる。
怪物から我が子を見守る親のような目へ。

何が善で何が悪かはっきりさせたくなってしまう私には響いた。どんな物事も結局矛盾していて複雑なんだよね。
理解して乗り越えない限り進めないし、考えるだけじゃなく行動しないさいって感じ。

今認識している現実は偽物で寝ている時に見る夢の世界が本物だったりと面白いかなと。



⚪以下ネタバレ



母の病気とそこから見える死から逃げていた少年への救済なのか。
夢の中で谷間に落ちる母親の手を離してしまったことと現実を結びつけてさらに孤独になっていたのかな。
終わらせたかったという思いが少し共感できてしまって心が痛い。苦しむより直ぐに終わった方が救われると思うがそのあとの後悔はより大きいものになりそう。

祖父の写真はリーアム・ニーソンだったから怪物=祖父と考えた方がいいのかも。母親も幼少期にそうした話を聞いて絵を描いていたみたいだし、受け継がれているのでは。
少年が母親の死を乗り越える物語に思えたけど、一方で母親が息子が自分がなくなっても強く生きていけるように願った形が顕在化したのかなとか。
病気で伝えることのできない母親の代わりに祖父がとなれば写真の意味や最後に母親と怪物が視線を合わせた意味を感じるような。
リーアム・ニーソンを知らない人が観たら気づけないかも。

透明人間の話や罰を与えて貰えないシーンは苦しかった。
注目を浴びすぎることでより孤独になり、悪いことをしたのにも関わらず罰を与えて貰えないことでさらに深い孤独に陥る。
家をやたらめったらに壊した時に祖母がなんも言ってくれなかったのは辛い。いっそ殴られるか怒られるかの方が救われる。

夢というより想像の世界。
それでもガラス割ってた時急に家のシーンになって家具がめちゃくちゃだった時ひゅんってなった。
コナーらしき人物が現実世界で何かを壊してたのはなんだったのだろうか。

⚪鑑賞
映画天国で鑑賞(字幕)。
鍋レモン

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