ケイスケ

光をくれた人のケイスケのレビュー・感想・評価

光をくれた人(2016年製作の映画)
4.2
“その神(ヤヌス)には顔が2つある。2つのものを見て、2つのことに引き裂かれている”

1918年、トムは戦争から帰還するものの、心は深く傷ついていた。その後彼は、灯台守の仕事に就く。彼はオーストラリア西部の岬からおよそ160キロメートルも先の孤島ヤヌス島に渡り、3か月の間一人で生活する。そして正式に採用されたトムは契約のために町に戻り、土地の名士の娘イザベルと出会う。

当時、実際に交際していたマイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルの共演作。撮影中に付き合ったのか、この映画がきっかけで結婚したのかはわからないけど、とにかく夫婦描写がリアル。『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールドとエマ・ストーンの関係を思い出した。

てか、しまった。本作は『ブルーバレンタイン』を撮ったデレク・シアンフランス監督作だったのか。通りで観ている間、お腹が痛くなったはずだ。ブルー・バレンタイン同様に観た人同士で語りたくなる内容。結婚している人、していない人、そして男女でも様々な意見が出るはず。現にネットの評価は結構、真っ二つに分かれていますね。

やはり本作で一番可哀想なのは娘のルーシー(グレース)ですよね。実の母親の前で「ママに会いたい」と泣き叫ぶ様子は本当に辛い。しかも二つの名前で呼ばれているわけですからね。冒頭の舞台のヤヌス神の“2つの顔”というのが効いてきます。もちろんトムとイザベルの秘密や嘘もヤヌス神の二面性とかけていますね。

本当に最後まで観ていて辛くなるんですよ。最初はトムとイザベルに肩入れして観てたんですけど、赤ん坊の親であるハナとフランクの幸せな回想を見せるもんだから監督は「鬼か!」と。事件が起きる前は全員が愛に溢れていたと思うと本当に泣けてきて泣けてきて。イザベルに批判的な意見が多いですが、自分としては彼女の行動に対しては簡単に割り切れない気持ちで観ていました。

前述したように賛否両論ある本作ですが、それはまさに監督が意図したところでもあると思うので色んな意見が出てくるのは間違いないかと。まさにブルーバレンタインがそういう作りですからね。個人的には抜群に面白かったです。最近は『淵に立つ』もレビューしたし映画のせいでメンタルがゴリゴリ削られています😅笑。原作の『海を照らす光』も読んでみようかな。