ま2だ

バリー・シール/アメリカをはめた男のま2だのレビュー・感想・評価

2.0
バリー・シール観賞。

ダイジェストを小気味よく挟んで進むが、映画そのものがバリー・シールの半生のダイジェストみたいな出来で、お茶漬けのようにさらさらとコクのない時間が流れていく。

ダグ・リーマンとトム・クルーズのコンビって実はあまり得意ではないのだが、本作のトムはいつにもましてトム・クルーズそのまんま、演じる対象のバリー・シールの人物像自体に厚みがないのか、トムの映画への関わり方がノイズなのか、いずれにせよトムの無駄なバストアップとスタントなしの演技を長尺で映すカメラの横溢ににうんざりさせられる。

原題は「American Made」、邦題の副題は「アメリカをはめた男」なのだが、映画の内容は「アメリカにはめられた男」という表現がぴったり、一人の男が様々な勢力間を自らの翼で渡っているつもりが、実は風に流されて翻弄されているだけであった、というシニカルな栄枯盛衰ストーリーである。トム・クルーズの笑顔がこのクソ邦題を呼び寄せたとしたなら、やはりトムはミスキャストであると思う。

本作では、映画を頭から見直したくなるようなシニカルなギミックが終盤に明かされるのだが、実際はこの出来の作品を再見するのは勘弁、というところなので上手く機能していない。いつ終わるんだろうこの映画、と思っている頃に訪れる終盤のスリラー要素は悪くないのだけれど、戸田奈津子の空気読まない字幕に苦笑する幕切れ。

と、自分にとってはいいところをあまり見つけられない作品だった。地に足がついた演技を見せるサラ・ライトとドーナル・グリーソン(ちょっとジェシカ・チャスティンに似ている)が救い。トムにはスタントなしで演じることへの固執が、演技や映画全体の表現の幅を狭めていることに気付いてほしい。
ま2だ

ま2だ