ヘルボーイ、鑑賞。
リブートしてデルトロ監督作にどう挑むか。というのが本作の期待値だったわけだが、それ以前の問題。まるでAIがディープラーニングで自動生成したような仕上がりに、中盤まではただただ困惑、後半はそのズレっぷりがじわじわ笑いのツボを刺激してくる。駄作というよりは神KUSO映画と称したくなる珍品だ。
本作、まず全体的に会話がおかしい。ある人物の問いかけに対する別の人物の答えが「え、話聞いてた?」と思わず耳を疑うナナメ回答、このパターンの連続なのだ。回想シーンも頻出するのだけれど「え、この話で合ってます?」と常に観るものの頭に新たな疑問符を付け加えてくる。
宇宙人が地球の映画を勉強して撮ったような、一見成立しているんだけど如何ともしがたいチグハグさが全体を支配していて、「トランスフォーマー 最後の騎士王」のアンソニー・ホプキンスの会話を思い出させるサイコパス感。これが前衛的に感じられる頃には徐々に本作の魅力にハマり始めている。ちなみに散りばめられたギャグや気の利いたセリフも全スベりで、ある種のすがすがしさすらある。狙ってできることではない。
本作はアーサー王に倒され、体をバラバラにされて封印された悪の女王の復活譚なのだが、この女王を演じるのが我らがミラ・ジョボヴィッチ。つまり本作は大根女優が劇中で復活していく過程を見せられるメタ構造にもなっているのだ。お得。
映画中盤で完全復活したミラジョボの万能大根感は期待以上、凄みすら感じさせるもので、なにそのセリフなにその表情という名迷走っぷり、合成しました!感満載の雑なCGシーンよりも数倍手に汗握る。一周回って目が離せない。
ジャンルものとしては、終盤に一瞬だけ「キャビン」のエレベーターホール的祝祭空間が訪れるもののあっけなく収束。血と臓物ばらまいとけばゴアしてるでしょ?という単細胞発想は逆に痛くも痒くもなく、この点でもきわめてAI的だなと感じた。
内容の割にむちゃ長いエンドロール(最後まで意味不明なポストクレジットシーンもあり)を眺めながら、そういえばこの映画、音楽のセンスもひどかったなあと振り返り。これ家で観ると確実につまらないので劇場で絶対に笑ってはいけないモードで、観ていただきたい。他意はないのだけれど、応援上映向けだなとも感じた。