ふしみあい

ラ・ラ・ランドのふしみあいのネタバレレビュー・内容・結末

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

デイミアン・チャゼル…やったな…
1回目はもう感情の渦に飲み込まれてしまった。この映画は人の心の一番純粋な部分に直に触れているような気がする。何も考えず、ただただ目の前のララランドに没頭し、共感し、感情が揺さぶられる。文字通り怒涛のラストに息をするのも忘れ涙が溢れ、エンドロールも押し寄せる余韻で涙が止まらなかった。

夢を見ていた、というキャッチコピーが本当に秀逸で、(日本の宣伝がやりすぎるほど入念だったのはさておき)夢を追いかける二人は純粋で、その追いかけている時間は本当にかけがえなく、キラキラと輝いている。もしかしたら、夢を追いかけている時が一番幸せだったのかもしれない。セブが自分の夢を諦めることで二人は幸せな家庭を築き、ずっと永遠に一緒に入られたのかもしれない。

けれど現実はそうではなく、自分の夢を諦められず、また、セブとミアはお互いの夢も本気で叶えようとしていた。離れ離れになることが二人の夢のために最良であるのならば、その選択をするほどに真剣だったのだ。
そのことを端的に表す昼間の公園のシーンが本当にイイ。
この先どうなるの?と問うミアに対してわからない、でも君はパリに行って成功する、自分はこの街に残って頑張る、と答えるセブ。
いつまでも愛しているわ、と目に涙を浮かべながら微笑むミア。俺も愛している、と全てを分かった上で返すセブ。なんて素敵で、なんて切ない関係なんだろう。

ミュージカル映画という枠組みの中で、登場人物たちは自分の感情をダンスと歌で表現する。シェルブールの雨傘やロシュフォールの恋人たちなどの過去の様々な名作から影響を受けて作られたというが古臭さは全くない。現代にアップデートしたミュージカルのような気がした。
タップにジャズに社交ダンス。色々な要素を巧みに織り交ぜながらその時のキャラクターの感情を映像化していく。そのため、完璧は求められておらずむしろ小さなミスは大歓迎だったという。

予告でも散々流れていた音楽たちもまた魅力的。日本語に訳された歌詞たちが胸に迫る。セロニアス・モンク版荒城の月をライアン・ゴズリングが劇中のバンド撮影の時、ミアと再会した時など絶妙なタイミングで弾く。そのほかの楽曲も魅力的。city of stars を二人でハモリながら歌うシーン、ピンク色の夕暮れの波止場でライアン・ゴズリングが切なく歌うシーン、最後のオーディションでエマストーンが歌ったAudition、映像や歌声、演者の表情がすごい。

他にも色あざやかな色彩で登場するミアの衣装と、洗練されているが少し風変わりなセブの衣装がものすごく効いていた。物語が収束するにつれてミアのドレスの色が失われていくのも切ない。
照明もすごくて、ウエストサイドストーリーのような二人だけの世界を劇的に演出したり、二人の夢への努力を見事に映し出したりしていた。

これだけの要素でもう十分すごいのに、撮影と編集もすごい。すごいしか言ってない。
ワンカットで撮影していたり、そのように見せかけていたり、ダンスの真ん中にいるカメラと、ロスの町並みの切り取り方が本当に素晴らしい。
編集は特に時間軸を一度巻き戻して繰り返すところで、前半は単純にすごく楽しかった。しかし後半、前半と全く同じ手法をもっと時を遡って行い、前半を知っているからこその切なさにもう息も絶え絶えだった。

町並みや小物のトータルの美術もめちゃ可愛いし、ロスのロケ地もすごく素敵。街ゆくモブたちを巻き込んでの圧巻のダンスシーンは確かにロシュフォールの恋人たちだった。
宣伝をテレビでも劇場でもSNSでも毎日見ていて、正直タイタニックに並ぶアカデミー賞ノミネートだからってそんなゴリ押ししなくても、、と嫌いになりそうなぐらいうんざりしていた。
しかしそんなこと忘れるぐらい、単純にこの映画はものすごくパワフルで、それでいて繊細で、心の隙間に入り込んできて、一生忘れられない傷跡を残して行った。

JKシモンズ、イイ味出すぎて、もう出がらしなってんちゃうかってぐらい印象に残った。好き…。
主演の二人も神。ライアン・ゴズリング、切ない!顔の説得力すごい。明日ナイスガイズ見るのに笑
エマストーン、歌も踊りも演技も素敵。そして色白でスタイル綺麗。

アイマックスで見てよかった。後何回かは普通の劇場に行きたい。
ありがとうデイミアンチャゼル、ありがとうララランド。