Mayo

ラ・ラ・ランドのMayoのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
3.9
観終わってからずっともやもや考えてた。だってアカデミー賞でいくつもノミネートし受賞し、これだけ話題になって、面白かった泣いたの感想をよく聞くのに、ミュージカル大好きで公開を待ち望んでいたにも関わらず、私にはあまり刺さらなかったのが悲しくて。なんでだろうなんでだろうと。

刺さらなかったと言っても面白くなかったわけじゃない。最後に期待していたまでの感情になれなかったというだけで、この作品はデイミアン・チャゼル監督の才能とミュージカル映画への愛に溢れてるという点で素晴らしかった。
オールドスタイルの長回しカットと、前作「セッション」でも多用されていた楽器を弾く手元などを重ねる監督らしい手法、メリハリのある画作りが映画を面白くしていた。
冒頭のハイウェイでの長回しはもちろん、プールでの水の中からぐるんぐるん踊り狂う人たちを撮ったカットなど、映像ならではのミュージカルをしっかりやっているのでカメラワークや撮り方でかなり楽しめました。

キャストについては、主役の2人は好きでも嫌いでもなかったんですが、オスカーを獲ったエマ・ストーンより、私はライアン・ゴズリングがすごく良かったと思う!
演技にしてもダンスにしても力が抜けていてこなれた雰囲気が最高。吹き替えなしでピアノシーンを撮影できるなんて、監督はしあわせだったと思う。ラストの表情もぐっときた。

ミュージカル映画へのオマージュもにやっとしてしまったり嬉しくなったり。ラストも昔のミュージカル映画みたいにスタジオセットをしっかり使った楽しい演出。白黒ミュージカル映画をいつも「色があったら一体どんなに豪華か」と想像しながら観ているのでこのラストはわくわくしました。

こんだけ褒めといて何が刺さらなかったのか。考えて考えて二つ理由を見つけた。
まず一つは、この作品は〝ミュージカル映画万歳“であって、〝ミュージカル万歳“ではなかったということ。
ミュージカル映画のオマージュは楽しめたけれど、そもそも「ミュージカルの本質は舞台にあり、ミュージカル映画はそのミュージカルを手軽に楽しむためのもの」だと思っている私とは考え方が違うのかな。映画が始まった瞬間から、囁く様な、お腹から出ていない声で歌が展開されていくのでものすごく物足りなかった。
また、ミュージカルミュージカルしたシーンや、脇役やアンサンブルが活きる様なシーンが少なく、ほとんどが主人公2人のパフォーマンスであることも途中退屈した原因の一つかも。

二つ目、単純にチャゼル監督が目指したミュージカルと私の好きなミュージカルのジャンルが違う!
ラブストーリーはラブストーリーでも、私が好きなミュージカルって、戦争や性差別や病気などなど、何か大きな社外的背景とか、本人の抱える葛藤とかがあって、それに対してのやり場のない気持ちを魂込めて歌うから心に響くんだよね。
30年代40年代のミュージカルってそういうの少ないから、そもそもその時点で違ったのかなと。
でもだからこそ、ミアがオーディションで歌った時は結構ぐっときました。
ただ脚本的に、ミアのおばさんとの関わりをあそこまででもっと知っておきたかった気がした。セバスチャンの方の、あのお店へのこだわりはすごく良く分かったのでミアの方もあのくらいまでやってたらもっと泣けたかも。最後お店の中にセバスチャンが集めてたであろうレアグッズ的なものが壁に飾られてるのはかなりぐっときた。

刺さらなかったとは言え、
現代にオリジナルソングでミュージカル映画が作られてこんなに話題になってたくさんのひとが観て感動していることが素晴らしく、それが嬉しくてしょうがない。

一回観ただけでも音楽は耳に残り鼻歌を歌ってしまうし、ミュージカルシーンだけでももう一度観たくなる。
また観たら違う感想が生まれるのかも。早くもう一度観たいです。
Mayo

Mayo