Film日記係

インクレディブル・ファミリーのFilm日記係のレビュー・感想・評価

4.4
個人的に大好きなMr.インクレディブルの続編となる今回の作品。1作目に比べて出来の劣らないもので、続編として素晴らしいものだった。(1作目ヒットしたシリーズの2作目が1作目を超えてくることはホントに少ない)

ストーリーの本筋としては前作から通じるもので、ヒーロー活動が禁止されている社会でスーパーパワーを持った一家が奮闘する姿を描いていた。前作から私はヒーローは世界を救う一方で、それ相応の被害をもたらしているという観点が非常に興味深くて理にかなったものだと思っていたので、その点の核心に迫った今作も好きになれた。

前作に勝る点がこの作品には結構あった。

まず、笑いの絶えない映画だった。個人的に今年1番笑った映画は「デットプール2」だと思っていたが、今作を見た今、どちらを1位にすべきか、甲乙付けがたい。視覚的にも、セリフでも笑いを入れ込むタイミングが素晴らしく、中盤は特に良かったので、2時間を超える映画だったが、全く長さを感じなかった。

次に、映像が前作以上に色鮮やかで、且つくっきりとした配色であった点で素晴らしかった。また、街で戦うシーンについて、前作は一般人の映し方が微妙だったのに対して、今作は一般人が逃げ惑う姿が顕著に見受けられ、リアリティーが増していた。

ストーリーについて、物語の始まり方や、エンディングのシーンなど、前作の印象的で好きなシーンと同じ構成にした点は凄く良かった。しかし、話の運び方は前作と割と似ており、黒幕も序盤で大体分かってしまうところは少しこの映画の落ち目に感じた。そして何より前作に比べて、ヒーローが追い詰められるような緊迫感に欠けていたと思う。また、終盤のストーリー展開が少々急ぎ足だったかなという印象だった。

それでもストーリー中盤の父のボブが育児に奮闘するくだりでは、家族生活における難しさや個々が持つ悩みなどがリアルに表されており、前作とは違ったボブの成長の軌跡を描けていた。また、映画を観る前は長女のヴァイオレットと弟のダッシュの人物としての掘り下げがおざなりになると予想していたが、意外にもヴァイオレットに関しては上手く流れを作って思春期の中で奮闘する姿が描けていた。

更に、社会の表舞台で活躍する母のヘレンの生き生きとした描写から、これまで家事や育児で縛られていた心の内がうかがえ、女性の社会進出が重要視される現代の風潮をよく表していたと思う。

あと個人的に1番好きなシーンの1つとして、物語のはじめでは、一家が敵と戦う際、赤ん坊のジャック・ジャックの子守りを互いに押しつけ合っていたが、終盤では、ヴァイオレットが自分からジャック・ジャックの子守りを引き受けたことから、家族がまた一歩成長した証として捉えられたところだ。

音楽については、前作同様格好良くて、且つ入れるタイミングもバッチリなところが多かった。また、エンドロールの音楽についてもこれはこれで良かったと思う。

面白さ:1.0 脚本:0.7 人物:0.9
映像:1.0 音楽:0.8

【おまけ】
ピクサー映画お馴染みとなった本作前の短編物語について

個人的に毎回ピクサー映画を観る際には楽しみにしているショートムービーだが、今回の作品はこれまでの中で圧倒的に1番だった。もっと言うと、セリフが1つもなく、画だけで物語を展開させるアニメとしては満点だった。テーマ自体は家族(母から見た息子)というよくあるものではあるが、映像には可愛さがあり、音楽も場面に応じて的確で心を揺さぶるものがあり、人物の行動にはユーモアがあり、物語の起承転結がしっかりとしていて(特に転の部分でキチンと意外性が出ていた)、なおかつ非常に感動的。文句の付けようもない。本編が始まる前に私はもう泣いていた。このショートムービーだけ観て、本編を観なくても満足できるほど、本当に素晴らしかった。

面白さ:1.0 脚本:1.0 人物:1.0
映像:1.0 音楽:1.0
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