ーcoyolyー

天使にショパンの歌声をのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

天使にショパンの歌声を(2015年製作の映画)
4.4
後述しますが、ちゃんと観たら邦題はこれしかなかったよ。あと原題にあるpassionを「情熱」と訳してる人多いっぽいけどこの場合は恐らく「受難」だよ…キリスト教のお話だから…

使われたドビュッシーは「家なき子のクリスマス」であと冒頭で歌われてたのはモーツァルトのアヴェ・ヴェルム・コルプス。他に歌われたのは例のシーンのショパン以外はフォーレとかシューベルトとかグロリアとか。あのドビュッシーぽいビートで4手×2台でピアノ演奏されてた曲はGigahuit(piano a huit mains) de Francois Dompierreとクレジットされてる曲だろうか、ピアノ曲で演奏者に4人の名前がクレジットされてるのこれだけだ。

北国!フランス系カトリック女子校!音楽!完全に何かを思い出して懐古モード入りました。でも私の学校の校長はこの映画に出てくる総長的な人物だったので、こんなにこじんまりとしてるけど家庭的な温もりのある学校ではなかったです。むしろカトリック女子校舞台でこんなぬくぬくしてるの珍しい、若干「サウンド・オブ・ミュージック」みあると思ってたら想像以上に「サウンド・オブ・ミュージック」だった。そういえば私「サウンド・オブ・ミュージック」は同級生のものすごくガチなカトリックの家の子にビデオ借りて観ました。

(ここは聖心会なので厳密には違うんでしょうけど)経営母体が小さなミッションスクールっぽい温かさでしたよね。カナダっぽいとも言えますけどね。

これ邦題つけるにあたって日本市場向けに「天使にラブソングを」意識するのは理解できるんだけど何でショパン?ショパンはピアノ弾きにとっては特別な作曲家でも合唱曲は作ってないよな…バッハだと意外性ない?実際に歌われてたシューベルトとかドビュッシーじゃダメ?と思ってたんですけど、該当シーンきたら、あ、うん、「天使にショパンの歌声を」しかねえわ、こんな感動的なシーンあるならごめんそのまますぎるこれしか邦題ねえわってなりました。この邦題は当たりの方です。ちゃんとショパンでちゃんと歌声が必要だった。

時代背景としては初めの方の引退する神父さんの話から察するに1960年代の第二バチカン公会議真っ只中か直後なんだと思います。それでトップダウンで色々変えざるを得なくて全世界的にカトリックが暗中模索してた時期かな、遠藤周作が「沈黙」発表してカトリック破門一歩手前まで行ったのもほぼ同時期のはずです。

私の学校は修道女をマスールと呼ぶ学校だったのでとても懐かしくて距離が近くて、楽しそうにスケートしてるマスールを見た時にはこういう学校だったら良かったのにな、と少し思いました。こういうことやってるから目の敵にされたのも、あの総長的な人物が校長やってる学校で育ったらわかるんですけど…修道女内の軋轢や派閥争いはリアルにあんな感じであるので、出家しても生臭いしこういう人間関係から逃れられないのか、と漠然とした出家願望を持っていた私に早めに現実見せてくれたのは良かったですね。修道女ってものすごく良い人と性欲とか食欲とかで色気出せない分変な名誉欲とか出世欲にまみれた人の両極端に分かれてて、後者の方が力を握りがちなので本当にゲンナリする世界でしたよ。憎い奴の潰し方もこんな感じなので、私は夢物語ではなくリアルなよく知ってる権力闘争としてこの物語を見ました。

ラストシーンはちょっとチェーホフも入ってましたね。ロシア男性との恋の話とかぶせたのかな?

実際にピアニストだという校長の姪役の女の子はピアニストらしい体型なのとても好感持てました。ピアノ弾くのパワー必要だもんね、ちゃんとしてないと体すぐ壊す(私は手首壊した)。

ケベックのフランス語が訛ってる訛ってるとものすごく言われますけど、どうやらかなり英語に近い発音のフランス語なんですね。私の耳はフランス語を音楽のように捉えて言語としての意味が流れていきがちなのだけど、ケベックフランス語は結構言語として耳に留まってくれて私には聞き取りやすかった。
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