HK

ジーザス・クライスト・スーパースターのHKのレビュー・感想・評価

4.0
ノーマン・ジュイソン追悼その2。
本作もジュイソン監督の代表作の1本、ロック・ミュージカルです。
有名なテーマ曲は何度も聴いたことあるものの、観るのは今回が初めて。

ミュージカルが苦手な私が唯一オールタイム・ベスト級に好きなミュージカル映画が同監督の『屋根の上のバイオリン弾き』なんですが、本作はその2年後に公開された同じくブロードウェイの大ヒット作の映画化。
セリフはほぼ無くて全て歌、アプローチも前衛的で『屋根~』とはずいぶん印象が違います。

冒頭、エルサレムの荒野を走るロケバス、ある遺跡らしき場所に停車するとヒッピー風ファッションのスタッフ・キャストがワラワラと下車、大道具や小道具を降ろし、衣装を着替え、荒野の真っ只中で舞台の準備ができたところにタイトル文字。

偉大なキリストを讃えるミュージカルかと思って観たらかなりイメージとは違いました。
本作で描かれるのは、無能な信者や使徒たちを嘆くキリスト、実はキリストの一番の理解者とも言えるユダの苦悩、キリストを純粋に愛するマグダラのマリア、銀色のヘルメットにタンクトップと迷彩パンツ姿で槍やマシンガンを持ったローマ兵たち、意外なピラト総督やぶっ飛びヘロデ王、キリストの磔を待ち望む民衆たち、などなど。

曲は何度も聴いていながら初めて知った歌詞・・・
「ジ~ザス・クライストよ♪あなたは何者?」
「あなたが犠牲にしたのは何?」
「スーパースターよ♪あなたは本当に評判通りの人?」
「もっとうまいやりかたがあったのでは?」
「なぜこんな昔と場所を選んだ?」
「こうなったのは想定内?」etc.

キリストへの懐疑的ともとれるアプローチ、黒人のユダにアジア系のマリア、市場で売られる機関銃や手榴弾にドラッグ、突如現れる戦車や戦闘機、もはや(あえて)時代は特定されず、キリスト教に疎い私でも興味深く面白く鑑賞できました。
本作、作品としては評価されながらも、キリスト教団体からのクレームは舞台の頃から根強く、映画館の爆破や放火騒ぎもあったとか。

・・・ラスト、皆は衣装を着替えロケバスに乗り込み去っていきます。一人を除いて。
HK

HK