サム

Meeting People Is Easyのサムのネタバレレビュー・内容・結末

Meeting People Is Easy(1998年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

UKロックバンドRadioheadが名盤「OK computer」を手にした結果、マスコミなどの喧騒のなか疲弊しきってしまったバンドの状態を記録したドキュメンタリー映画。ドキュメントだが一応ネタバレ扱いにしておく。

出だしから強烈だ。不穏な電子音声が鳴り響く「Fitter Happier」で始まるオープニングはおよそミュージシャンとして最大の栄誉を手にしたとは思えない絶望感とストレス、何かへの恐怖が滲みでている。ライブ映像に入ったかと思えば演奏シーンもそこそこに今度は雑誌のインタビュアーがバンドに投げかけたであろう質問文を延々羅列していくだけ。そして舞台はフェスに移る。ここではトムの「客の顔が見たい、ライトをつけてくれ」からのCreep、巻き起こる大合唱という感動の名シーンが映し出されている…はずなのだが、マイクを観客に向け笑うトムは自虐的に見えるし、ひたすらトムしか映さないカメラワーク、モノクロ調といい色々歪んで見えてきてしまう。あの名作の裏で彼らがどれだけ消耗していたのか…続きは実際の本編でどうぞ。

よく聞く話とはいえ、バンドが忙殺されていく様を実際に見るとかなり辛い。質問者がくだらない質問を連発する所なんてもう…。これをわざわざ映画にするあたり、流石の性格の悪さ…ゲフン目の付け所か。所属レコード会社のトップが集まって「プラチナレコードだ、よくやった」とバンドに表彰状を渡すシーンは最悪すぎて笑うしかない。

見どころあるシーンは多いものの、山があるわけでもなくひたすら淡々とシーンが映り変わるだけなので映画としては別に面白くはない。ライブ映像を期待してもいけない(ただ終盤のレコーディング風景はファンにはたまらない)。あくまでコアファン向けの記録映像だと思う。


にしてもレディオヘッドならもう少しこだわってメッセージやらブラックジョークを盛り込んだ構成にしてきそうだが、直球で「音楽業界はブラックだ。俺たちはもうクタクタだ」と言うだけの映画を作って発表したあたり相当追い込まれてたんだなと思う。メンバー全員が追いつめられていたのには少し驚いた。それでもバンドは解散せず、逆に振り切って「Kid A」にたどり着いて今も活動しているんだから感慨深い。

「表舞台の華々しさ、その裏に迫った」…というほどの内容ではないが、「その裏を記録した」作品にはなっていると思う。気になった方はどうぞ。
サム

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