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グッバイ、サマーのろのレビュー・感想・評価

グッバイ、サマー(2015年製作の映画)
4.2

「あの夏を、覚えてる?」

親なんてキライだとイライラし、
自分の力だけで生活したいと思う。
特別な誰かになって、
みんなに認めてもらいたいと願う。

チビで女みたいとバカにされるダニエル。
ある日、転入生テオと出会う。
二人は仲良くなり、一つの計画を思いつく。

「自立って憧れないか?
誰の手も借りず、好きなところへ行ける」

廃品回収で部品を集めて車を作る。
行き先も行き方も、すべて自由。
二人の旅の行方は・・・?


14歳のころ、
テオみたいに想像力は豊かではないし、
友人に対する思いやりも、そこまでなかった。
ダニエルのように絵の才能もなかったし、
絵を画廊に持ち込むようなガッツもなかった。

あの一年間、毎週土曜日。
図書館横の公民館で開かれる文章講座に通っていた。
ジュニアのための文章講座。
そこには小学生から中学生の生徒が20人ほどいた。

中央には講師のおじいちゃん先生。
どっしりと座って、いつもしかめ面で、
その雰囲気はとても厳しそうだった。

原稿用紙2枚分の作文を書いて、
持って行く、あの緊張感。
先生は添削用の赤鉛筆を構えている。
わたし、とても不安になりながら、先生の隣にいた。

いつもいつも、どこか添削される。
それは送り仮名だったり、形式だったり、カタカナ表記だったりした。
次第に添削されることが怖くなって、文章がまったく湧いてこなくなった。原稿用紙を前にしても、頭が真っ白になって、泣きそうになった。情けなくてたまらなかった。

このまま続けていても意味がないと思ったので、
先生の助手の方に
「もう、文章講座、やめます」と申し出た。
けれど、
「書かなくてもいいから、この場にいたらどう?」
と言われ、しぶしぶ残った。

自分は文章が書けない。
でもみんなは真剣な眼差しで、鉛筆を走らせて。それはとても羨ましかったし、劣等感を感じた。

辛い冬が終わって、解放されたとホッとしたとき、
先生からハガキが届いた。

文集が出来上がったので、生徒の皆さんに手渡ししたいというような内容だった。
試験も近かったし、何より先生に会いたくなかったので、お断りの返事を出した。
すると、先生からまたハガキが届いた。
試験に頑張って励むように、と書かれた直筆のハガキだった。
それからすぐ、先生が亡くなられたと耳にしたとき、
わたしはハッとしました。
先生は断りのハガキでも、生徒からの便りを喜んだのだと。
だから、すごく後悔したの。
逃げずにちゃんと書けば良かったって。

それからは、せめて文章だけでもありのままの自分でいよう、と思うようになりました。

文章講座に通ったあの一年間。
まったく無駄ではありませんでした。
大学に入ってから文章を書く機会は格段に増えたし、
何よりフィルマークスで自分の文章を綴るようになったから。


ダニエルとテオ
ケンカあり、トラブルありの二人旅も かけがえのないものに違いない。後悔も切なさも、すべては糧となる。



オマケ

久しぶりに文章講座の文集、読み返してみたけれど
わたし、ガッチガチに緊張した作文を書いていて、笑ってしまった。
同じ中学、同じクラスだった男の子の文章はのびのびとしていて、あの頃は気付かなかったけれど、豊かな人だったんだなぁと思う。


卒業式の日、わたしはすでに高校が決まっていた。彼はこれから受験だった。
わたしは頑張れの気持ちで、握手をしたのね。
お互い照れ臭かったけれど、いい思い出。
元気にしているかな? 懐かしくなりました。
ろ