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この世界の片隅にの10000lyfhのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
3.5
第二次大戦中の地方都市(広島県呉市)の銃後の人々の日常生活を、のんびり屋で楽天家ながら内に逞しさも秘めた女性・すずの、家族や周囲の人たちとの交流を通して、ユーモアとペーソスを基調に描いたアニメ作品。不発弾により夫の姉の娘・晴美と自身の右手を失うという自身の、そして広島原爆投下という社会の、2つの大きな悲劇を乗り越え、力強く生きるすずの姿は、時代やバックグラウンドを超え、懸命に人生を歩む人の共感を呼ぶ。この 2シーンでそれぞれ、痛みと喪失を表現した白黒のグラフィティ風(アニメ作品中)アニメーション、また、少し離れた呉で感じられた広島原爆投下の瞬間の淡い閃光による表現が印象的。後者については、原爆の悲劇を後世に伝えてゆくにあたり、凄惨さを正面から捉えるのみでなく、距離を置いて、閃光/時間差を置いた振動/キノコ雲/飛翔物/後遺症に苦しむことになるだろう人物などのパッチワーク表現でも、多くを語り得ることを示してくれた。パステルトーンで水彩画のような輪郭線の柔らかいアニメ表現と、ハスキーヴォイスでささやくようなコトリンゴの歌が、作品全体を抑制された優しい空気で満たす
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