Adachi

イコライザー2のAdachiのレビュー・感想・評価

イコライザー2(2018年製作の映画)
4.8
とても素晴らしい映画に出会ってしまいました。ストーリーも暴力描写も本作の全てが好み。
もう一度言います。とても素晴らしい映画だった。

この手の「舐めてた奴が実は...」映画につきものの、オープニングの「いつものお仕事」描写は、デンゼル・ワシントン演じるマッコールと後に描かれる他の奴らの違いを示すためのものであり、マッコールは相手の言語でやりとりをするが、ブリュッセルの被害者は口を閉じてろとばかりにただ殺される。穿った見方をすれば、アメリカはちゃんと理解してから悪を成敗しているのだという主張にも取れなくもない。

とあるファミリーに対して皆殺しを宣言するマッコールの背後に別のファミリーが姿を現す時、この映画の世界には上(一般人)と下(人を殺す者達)の違うレイヤーが存在しているのだと分かった。ここで彼がヨークの娘を抱き上げるのは、勿論自らの保険のためだが、上のレイヤーへの接点を作って手出しできないようにしたわけです。

兄を銃で殺されたマイルズが自分も殺す側に回ろうとするのを、マッコールが「アートじゃ食っていけないなんて、環境や差別のせいにするな」と諭すのは、デンゼル・ワシントンが監督主演した「フェンス」の、夢を見るな、お前も俺と同じように潰されるのだからと押し付ける父親の真逆であり、それを意識しているという点で二作は繋がっている。「悪」が存在するのは仕方がないが、その連鎖は防がねばならない、身近なところから、というのが本作の姿勢なのだと感じた。

マイルズとの「(ドア越しに)マッコールさん?」「(誰だか知っていながら)どなた?」、「飲み物はある?」「飲みたいのか?」なんてやりとりは、「先生、トイレ」「先生はトイレじゃありません」に代表されるいわば教員ギャグなわけで、マッコールの几帳面さというより文脈に依らない言葉の遣い方、「教育」にはそれが必要だと考えているのが窺えてとても面白い。言葉といえば、「あの夫にはガールフレンドもボーイフレンドもいなかった」「妻の方は?女も浮気するのよ」、「おれはアートで食っていくから他の授業は受けない」「馬鹿じゃアートは続けられないぞ」など非常に今っぽいセリフが散りばめられているのもよかった。

女性が暴力をふるわれるシーンもとてもいい。何がいいって、女が暴力に巻き込まれたらああいうふうだろうという「普通」がそこにあり、ただそれだけを見ているだけで気持ちがいい。スーザンからマッコールへの置き土産があの再会に繋がるのが、個人的にジーンとくるどころじゃなく号泣必至のラストだった。
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