Adachi

思い、思われ、ふり、ふられのAdachiのレビュー・感想・評価

2.8
映画の冒頭から主要人物四人それぞれの心の声を押し出してくる。その異様すぎる構造に若干の気持ち悪さすら感じていたのですが、これは「口に出すか出さないか」の話なのだということが次第にわかってくる。高校生の彼らの「口に出すか出さないか」問題は四人の間、それこそタイトルの「思い、思われ、ふり、ふられ」の間をグルグルと回るわけです。

それは序盤に朱里が母親に対して声を荒げる場面からわかるように、親の再婚により家族になって云々=子どもには自分の環境をどうすることもできない。ということの表れ(この映画内では)であり、その閉じられた世界の鬱屈した情動のうねりの先にある可能性は、元高校生のアラサーとしてめちゃくちゃよくわかるのですが、作中四人が「思い、思われ、ふり、ふられ」の外側に在る(自己の思いをぶつける)対象としての大人を、朱里の母親だけにほぼ集約させているのは、映像で見るとやっぱり不自然さを感じる。

個人的に本作の白眉として、祭りの夜の浜辺美波の表情の見せ方が素晴らしかった。あの場面の状況による効果もあるんだろうけど、良い意味でめちゃくちゃ醜く映されてる。それって根幹にある朱里の醜さ(とされるもの)の表現として物語上非常に大切な要素なわけですし、仮にそれを意図的に演じられているのであれば、彼女の女優としての限りない可能性に、大変感銘を受けた次第であります。
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