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エンド・オブ・キングダムのTEPPEIのレビュー・感想・評価

エンド・オブ・キングダム(2016年製作の映画)
1.3
この作品には致命的に「ドラマ」がない。リンダ・ハミルトンに脚本読ましたらこう言われてしまうよ。前作「エンド・オブ・ホワイトハウス」のスマッシュヒットにより製作された本作は、舞台をロンドンに移し、各国の首脳が集う場所で繰り広げられるアクションがメイン…だけれども、別に後半入る前からロンドンである必要性もない。しかも撮影自体はロンドンじゃないシーンもあるのでかなり丸分かり。「ロンドンが堕ちた」という単なるホラ吹きもいいところである。前作も決して良い出来ではなかったが、大統領とシークレットサービスの関係とハラハラできる瞬間があり、見ごたえそのものはあった。主人公のバニングがトラウマを抱えながらも1人奮闘する姿があったが、今回はまさに非の打ち所がない主人公だ。つまり、つまらない。最強だし無敵だし、大統領守る仕事を全うしないあたりも苦笑。最初と最後で登場人物たちが何ら変化していないので全編通してドラマがない。加えてアクションの方だが、前半は棒立ちマシンガン。カーチェイスはイイ感じだけど、後半失速。ついには大統領警護が特殊部隊と一緒に戦うという無茶振りまで発生する。しかも問題はここから。監督センス駄目じゃないのか…。おそらく誰もが違和感を抱く、この手に合わない「ロングテイク」が多用されるのだ。基本長回しは「バードマン」や「トゥモローワールド」のように人物をじっくり映す効果的な手法だが、特殊部隊とバニングさんのアクションの長回しはカットしてるのが丸分かりのテレビゲームのようだ。加えてこれをクールだと勘違いする演出には正直ゲンナリである。キャストは相変わらず豪華だが、バニングさん以外は結構適当に演じているのでジェラルド・バトラーがこのシリーズを気に入っているという話は本当だろう。実際、第3作が目下製作中だ。この映画は一体何がしたかったのか。それはラストで分かる。要は「アメリカは力でねじ伏せる」というサーカスティックだ。この感覚は「ダイ・ハード ラストデイ」の伝説の、放射能中和ガスという馬鹿げたものを見た時の気持ちである。正直、「エンド・オブ・キングダム」は政治的にアウトな内容なので野放しに楽しむことが出来ない。
総評として、映画的なアクション要素を集めて頑張った「エンド・オブ・キングダム」は最後まで違和感が残り、無理解な展開が足を引っ張る。見た後に印象に残ったアクションシーンもないので、アクション映画としても及第点にはいかない。バニングが苦しんだ姿を見たことねぇから。絶対死なねぇよコイツ。
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