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光のノスタルジアのKKMXのレビュー・感想・評価

光のノスタルジア(2010年製作の映画)
3.8
チリの現代史と天文学をミクスチャーしたドキュメンタリー。正直、星とか興味がないためイマイチ両者のリンクがつかめなかったけど、充実した内容ではありました。

世界最大の天体望遠鏡のあるアタカマ砂漠。ここには軍事独裁であったピノチェト政権によって虐殺された人たちの骨が眠っているのです。


チリは先進的な国家でした。1970年にチリは世界初の選挙による社会主義国家となりました。アジェンデ大統領はキューバと国交を回復したり、先住民族に農地を返したりと、いかにも人道的な政治を行いました。
しかし、共産主義の勢力拡大を阻止したいアメリカは、軍人ピノチェトを支援して1973年にクーデターが敢行されました。アジェンデは殺され、これ以後チリは軍事独裁政権の国となったのです。

ピノチェトはとにかく国民を弾圧しまくりました。アタカマ砂漠に収容所を作り、多くの政治犯を処刑しました。殺された人たちは砂漠に埋められましたが、掘り返されるとマズいため、多くは再度掘り起こして海に捨てたそうです。
しかし、そのまま埋められている人たちや、骨の破片がこぼれ落ちたりして残骸が残っている人たちもたくさんいるそうです。
そして、遺族の方々が、今もなおアタカマ砂漠に来て遺体を探し続けているのです。

破片ではなく全身の遺骨がほしい、見つけるまでは死ねないと語る遺族の方が印象的でした。

いまだに国はこの事実を総括していないそうです。静かな怒りが伝わるドキュメンタリーでした。


【素晴らしきピノチェト政権】
(wikiより引用)
・約3万人殺害
・数十万人が収容所に
・国外逃亡100万人
・4人に1人はGNPまったくなし
・GDP成長率:1.5
(ラテンアメリカ平均4.5)
・失業率:22%
・貧困率:40%
(アジェンデ時代の2倍)

ちなみにこれは、ミルトン・フリードマンの理論『新自由主義』を導入した結果だそうです。
つまり、我々が現在生きている世界とモロに地続きということです。
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