なべ

シン・エヴァンゲリオン劇場版のなべのレビュー・感想・評価

3.7
Qのレビューの続き。

 そしてシン・エヴァ。一応、納得できたし、ストーリーに満足もできた。しかし、見終わってからの心持ちがなんか違う。疑問や辻褄合わせで脳内のシナプスが激しく活性化するあの感じがないのだ。こんなのエヴァじゃない。そうか説明が過ぎるのだ。
 やれ、おれは加持の上司だっただの、あんたのせいでどれだけの地獄を見ただの、艦長1人にしておけないだの、どうですか渚司令だの、みんな語る語る。語るために回想されるされる。それをなぜQでやらなかった。あれだけ頑なに説明を拒んでいた流儀を崩して、どんだけ説明すんねん!と。ちなみにぼくはヴンダーの役割をきっと方舟ではないかと仮説を立てていたが、これもしつこいくらい説明してくれた。上映時間が長いのは、積み残しの荷物を全部総ざらえしたせいだからね。
 エヴァの作風はすべてを語らないところが身上。自分の持てる知識を総動員するか、答えを求めて外に知恵の枠を広げるか、あるいは思考により理解を深めるか、人によってアプローチは違えど、知との戯れで完結する作品世界こそがエヴァなのだ。
 何も思考せずに、語られるまま受け入れるだけで終わる最終話が、賞味期限切れの在庫を大放出した店じまいセールのようでなんだか悲しい。終わりの歓びが残念臭に包まれてるなんて。
 完結編としてAir/まごころを、君にとどちらがおもしろいかと問われたら、考えるまでもない。アスカの覚醒、エヴァシリーズとの戦闘、からの喰われる二号機、そして始まる人類補完計画のトラウマ級のスペクタクルに代わる案などないのだ。
 そもそも新劇場版は旧劇場版でシンジくんが再構築した世界。何とでも作り変えられたのに、相変わらず使徒はいるし、ネルフもゼーレもあって、細部は違えど大差ない世界(そりゃアスカに気持ち悪いと言われるよね)。作り手としては旧作とどう違えるかってところが命題なわけで、そんな二番煎じがオリジナルを越えることなどできるわけがないのだ。
 それでも第三村の集落で描かれた再生の萌芽や束の間の平和は長いエヴァの物語の中でもひときわ眩しさを放っていたし、成長した彼らとまた出会えたことは、ずっとエヴァを追ってきた身にはこの上ないご褒美だった。
 でもゲンドウとのあれやこれやや、再び再構築された世界のあれやこれやは、いずれも想定内。躊躇いなく発砲したリッちゃんはよくやった!と褒めたいけど、知ってた。全部知ってたよ、そんなこと。結局そんな話になるならQの引っ掻き回しは何だったのさ。
 それにしてもあの終盤のチープなCGよ。ねらい? いやいや、それ以外のバトルシーンでも酷かったじゃん。最後なんだから、ちゃんとエヴァらしい手描きのバトルを堪能したかったんだけどなあ。
 ついでに言っとくと、劇伴も酷かった。なぜいつもの曲をやらないかな。なんだか角川映画みたいな安いセンチメンタルなダサめの曲を流しちゃって一体どうした⁉︎ 宇宙戦艦か?
 もはや庵野にエヴァへの愛はなく、別れた女房への慰謝料みたいなエネルギーが作品から匂い立ってるのがわかり、別離の儀式に付き合わされたかのようなめんどくさい感じがシンエヴァの感想ってことになる。
 長かった。長すぎた。待ちすぎた。もうとっくに終わってたんだよ。それがわかっただけでもよしとしよう。さよならエヴァ。もっかいくらい観に行くけど。

追記
 IMAXに続いて4DXでも観てきた。揺れた。ぐわんぐわん揺れまくった。4DX初体験の観客が多いのか、上映前のデモムービーでかなりざわついてた。うん、寸足らずなIMAXより4DXの方が楽しかった。高いけどオススメ。
なべ

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