野

シン・エヴァンゲリオン劇場版の野のネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

初めてエヴァを観たが、すごかった。
カルト的な人気を誇るのにも頷ける。
それは商業主義的なテンプレの感動や興奮ではなく、庵野から捻り出された、実感のこもった表現であったから、人の心にスッと突き刺さったのだろう。
まずはストーリー。
ストーリーはとても神秘的であった。主語の大きい話であり、それを担うのが超個人的なシンジくん、碇司令、綾波レイなどなど。個人の心理が観念的に世界を理想郷に変えようとしてしまうその心理がとても美しかった。心理描写は、かなり深いところまで行っている。言葉だけでなく、構図、音、色、全てを動員して表現しようと試みているのが伝わる。シュルレアリスム作品ほどの心理への直向きな向き合いが感じられた。
次に構図である。
構図には感心した。基本この映画では静止画のつなぎ合わせなのだが、それでも満足できるのは、構図が充足しており、いつも新鮮だからであろう。空と鉄塔の構図が私のお気に入りである。絵的にも成立してしまうような美しい構図である。
次に音。
絶望的なシーンで流すクラシックのミスマッチが私を感動させた。映画には暗いところがあり、明るいところがあるから際立つ。普通はそれを時間ごとに分けて表現するのだが、庵野は一つの画面に同時に存在させた。その結果私の心は混乱し、猛烈なカタルシスを誘発させられた。
全体的に庵野監督の構図、音、神秘的なストーリー、の作り込みに作品へのこだわりが感じられる作品であった。
良い映画であったと思う。
野