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Hipsters(英題)
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『Hipsters(英題)』に投稿された感想・評価

風紀委員のまじめ男子が不良少女に惚れてしまったような、あるいは貧乏長屋の青年がセレブ女子に惚れてしまったような。そんなボーイミーツガールを軸に、1950年代のモスクワでカラフルなファッションに身を包みジャズやロックンロールに熱狂した若者たち「スチリャーギ」の青春を歌うミュージカル。
灰色の共産世界と極彩色の若者たちが大袈裟に誇張されてて分かりやすい。

スチリャーギとは、雪解けのソ連に現れた、アメリカの映画を真似して派手な服装で音楽やダンスを楽しむ若者のこと。西側の劣悪なスタイルにかぶれた連中という、元はソ連の公式メディアがつけた蔑称だった。
下は五木寛之の『さらばモスクワ愚連隊』のような不良少年から、上は医者や外交官の息子のように親の財力があり西側の物に直接触れられる機会に恵まれた者までいて、本作には後者が登場する。

チャーリー・パーカーやプレスリーのレコードは監視の目をかいくぐって密売人から買い、レントゲンフィルムを再利用した海賊版に刻まれ手から手へと広められていく。好きな音楽を聴きたい、それだけの事が投獄と紙一重だった。
自分たちをアメリカ風にフレッドだのボブだのと呼んだりして(本名はフョードルやボリス)、わずかな情報源から想像したアメリカへの憧れはかつて日本も経験しただろうから、見ていて少し気恥ずかしくなったりもする。

主人公の大学生メルスは共産主義青年団コムソモールの一員として非公認の音楽を取り締まるためダンスホールに突入し、乱闘の中でスチリャーギの美少女ポリーに一目惚れする。
ポリーに近づくためお洒落をしたいが表向きの店では画一的な灰色の服しか売ってない。闇ルートで派手な服を買い、髪をリーゼントに整え、スチリャーギのたまり場に行くと、リーダー格のフレッドは面白そうな奴が来たぞと仲間に加えてくれる。
フレッドやボブは裕福な家の息子だからか鷹揚で気前が良く、ダンスを教えてくれたり、これで勉強しろと幾何の問題集に偽装したカーマスートラをくれたりする。(プレイボーイ誌が手に入らない世界らしさがある)
メルスという名前はマルクス・エンゲルス・レーニン・スターリンの頭文字をとった筋金入りのソ連ネームで、イケてないからメルにしろとボブからアドバイスされて以後はメルと名乗り、ご近所からアメリカかぶれと眉を顰められながらスチリャーギ仲間との付き合いに夢中になっていく。

メルは仲間とダンスホールに繰り出し、生で聞くジャズに魅了され、これも闇ルートでサックスを手に入れる。(楽器ができればモテると思ったんだろうな)
家で西側の音楽を聴く手段はラジオだけ。周波数目盛に東側諸国の都市名が書かれているがそこにダイヤルを合わせてもジャズなんか流れてないから、隙間を飛んでる西側の電波を捕まえるのだ。心の中でニューヨークにチューニングを合わせ、ノイズ交じりの "Summertime" に合わせて夜な夜なサックスを練習する。いつしか目の前にブロードウェイで活躍する黒人ミュージシャンが現れて一緒に演奏し、いいねと褒められる幻想を見るほどに上達して、ポリーの心を射止めるためにステージに立つ。(メルの歌に合わせて真っ先に踊り出すフレッドがいい奴すぎる!)

舞台の1955年はフルシチョフがスターリン批判をする前で、親世代はまだ全体主義の恐怖に支配されている。ボブの父は身内が密告され投獄された経験から、ポリーの母は党職員の立場から、我が子の西側文化への傾倒に苦い顔をするが、心を開放する喜びを知った若者は灰色の生活にはもう戻れない。(お洒落に夢中なだけの娘にアメリカのスパイだと怒り狂う母親は滑稽だが、理解不能な新しい価値観に直面した旧世代の姿としては普遍的なのかも)
一方、フレッドは父親の言いつけに従って外交官になるためアメリカでインターンをすることになり、仲間との付き合いをやめて旅立った。
サックスの腕を上げたメルはフレッドのいなくなった穴を埋めるように存在感を増し、仲間と共に音楽やダンスに熱中する日々を送る。街に増殖するスチリャーギを看過できなくなった共産党は新聞に「今日お前はジャズを演奏しているが明日は祖国を売るだろう」と書き立てて非難し、コムソモールは取り締まりのためにまたもダンスホールを襲撃した。(ハサミを持ってくるのが『僕らの七日間戦争』のオンザ眉毛を思い出す)

フィナーレではメルが一人で路地を歩いていると、後の時代に登場する様々なジャンルのミュージシャンやその音楽を楽しむ人々が集まってきて、歌いながら大通りを闊歩していく。音楽への愛に満ちた楽しくて気持ちのいい作品だった。

NHKラジオ『まいにちロシア語応用編 知られざるソ連への旅』第5課・第6課で紹介されたので鑑賞してみた。
参考『1950年代の若者文化の伝播と現代における再受容の問題―ソ連の「スチリャーギ」をめぐって―』神岡理恵子著
https://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/record/37501/files/reny002006.pdf

原題Стиляги=スチリャーギ
権利者らしき Primefilms LLC のyoutubeチャンネル複数に動画がある。

ラストの会話はネタバレコメントに↓
RM
3.8
めも
集団で生きる我々は、個々としてどのように振舞うのか。その振舞いは自分が許容できるか、できないか。

カラフルな服装や狂ったような踊りに陶酔する「彼ら」が、ファッションやジャズの歴史や成り立ちには目もくれず、表面的なアメリカ文化に魅了されていたのであれば、制服のシャツをわざと出したり、髪を染めたりする高校生と違いないのかなと感じた。

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