スペインのサスペンス映画は国のイメージに似合わず陰鬱な出来が多い気がする。
『パフューム』とか『ブラック・ブレッド』とかもスペイン作だった…
照り輝く太陽の下の陽気な人々といった印象はあくまでスペインが持つ僅かな一面なのかも。
舞台は独裁政権から民主化へ舵を切ったばかりのスペイン。
姉妹が無惨に殺された事件を2人の刑事が追いかけていくところから物語は始まる。
主役と美青年以外なんかみんな顔が似てる(ように見える)ため関係性がわかりづらく、また説明してくれるほど親切なつくりでもないためしっかり見てないと置いてかれそうになる。
捜査上で麻薬や売春やらのきな臭い話題が尽きないわりに、結局拷問の理由さえ不明瞭で煙に巻かれていく感じが、まだ陰から這い出たばかりの国の不穏さを色濃く映しているようだ。
萎れた故郷で時代の変化にうまく順応できない人間たちの蠱毒、行き場のないフラストレーションの塊が渦巻いて生命力がじわじわ尽きていくような沼地。
そこから一縷の望みをかけて抜け出そうとする少女たちに毒牙をかける大人の構図がひたすらおぞましい。
ラスト、表向き事件は万事解決。
この幕引きに疑問を感じるような"異物"は体よく吐き出し、黒幕や協力者は未だ潜み続ける有り様がまるで街全体がこれを是とした醜悪な生き物のようだった。
全く爽やかさの無い不穏な終わり方にどうしょうもない気持ちになった。