彦次郎

永い言い訳の彦次郎のレビュー・感想・評価

永い言い訳(2016年製作の映画)
3.9
自宅で浮気中に交通事故で妻夏子を亡くした小説家衣笠幸夫と同じく事故死した妻の親友遺族との交流を通して内面に向き合うヒューマンドラマの逸品。
遺族の子どもの面倒を見ていくうちに成長して妻との愛情が再確認できる…というような凡百な話ではありません。妻の携帯からは彼にとって衝撃的な言葉が綴られており(幸夫の場合自業自得ではある)、マネージャーも彼の悲しみの繕いを見抜いています(でも番組は作らせる)。
劇的なことではなく淡々と進行しながらも心情を丁寧に描いているところが良いと思いました。特に終盤の遺族の息子である真平と列車で差し向かいに話すシーンは虚飾のない言葉で印象に残りました。
たぶんこの作品を観ている方と感想と認識はズレますが妻の親友の夫である大宮陽一の人との距離感というか態度が妙に怖いです。ホラーではなく人間関係的なもので直情型ゆえの言動といえばよいのか名状し難い不穏さです。この緊張感も勿論監督の計算でしょうが演じた竹原ピストル氏の演技力もあってのことでしょう。
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