磔刑

バーニング・オーシャンの磔刑のレビュー・感想・評価

バーニング・オーシャン(2016年製作の映画)
2.1
「不完全燃焼」

物語序盤では主人公の私生活や家族が描写され、その後石油掘削施設の現場に入れば掘削作業の工程や現場での主人公の役割や立場、その他の作業員との関係性そして現場で働く者と会社の幹部達との軋轢などのドラマが丹念に描かれている。事故が起きるまでのドラマの積み立ては十分で見応えはあるものの、本題である石油の逆流からの大火災が起きるまでに所有時間の半分を使い切ってしまう時間配分は余りにも悠長過ぎる。
火災が起きてからも主人公の妻や現場から離れた者の視点の介入が多く、ようやく本題に入ったスペクタクル展開もそれまでのドラマパートと演出の差が無く間延びしておりテンポが悪く緊張感が薄い。

肝心な火災パートでも主要人物にこれといった役割や目的もなくただ逃げ惑うばかりで見所も少ない。マーク・ウォールバーグやカート・ラッセルはドラマパートではストーリーや人物像に深みを持たせる演技を見せているものの、火災が起きてからは出来る事の少なさ故存在感が薄くなり、モブキャラクターと同じように火災現場から脱出するだけで火災を鎮火したり大勢の人を救助等の活躍は無くカタルシスも感じられない。

ただ安全検査を巡るカート・ラッセルとジョン・マルコヴィッチとのやり取りは会社等の大きな組織に属した事のある人なら誰しも感じた事のある不平不満がリアルに描かれており、自宅に居ながら職場に居るような居心地の悪さを体感できる。ありがちなパニック映画ではあるもののヒーロー不在の構造はリアルを追求したが故だろうが上手く扱えないと只々単調に感じる。『タイタニック』と『タワーリング・インフェルノ』と『バックドラフト』を足して雑に3で割ったような作品だが、このような中途半端な作品を観るなら上記の作品を鑑賞した方が有意義だ。
磔刑

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