サラリーマン岡崎

かごの中の瞳のサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

かごの中の瞳(2016年製作の映画)
4.3
盲目の女性が視力を回復させ、本能に目覚めていくこちらの映画のメインはもちろん「視力」。
それと同じように、映画の映像がとても印象的に撮られている。

それは、とてつもなく美しい。
主人公の様に、この世界はこんなにカラフルだったんだと、観客も気付かされる。
だから、英語圏の映画であるのに、
舞台はタイとスペインを選んでいる。

しかし、それらは美しいだけではない。
少し不気味さも感じられる。
美しすぎて、どこか歪に見える。
その美しさは何もかも許してくれそうな自由さがある。
けど、自由なことが本当に幸せなのか?
この映画のテーマを映像の歪さから伝えてくれる。

人間は自由であると、自分の思う気のままに生きてしまう。
性欲を垂れ流し、他人のことを考えずに、荒れる。
それこそ、主人公が盲目のときにしていたイマジネーションをしなくなる。
ある程度制限のある方が、少し自由になったときの幸せを肌で感じやすくなるのかもしれない。
少なくとも人間は理性がある動物であり、
その理性は他者への気遣いでもある。
社会はひとりで生きてはいけないので、
他者とどう生きていくかが人間としての幸せに繋がるのかもしれない。

そんな自由奔放に生きた主人公と彼女の夫の結末がこんな風になるとは…ある程度予想はついていたが、嬉しいはずの事実が2人にとっては絶望でしかないという…。
この夫婦、夫もしてはいけないことをしましたが、妻は妻で怖いです。
2人とも理性のない悪魔になってしまったんだな…
ラストシーンがなんとも悪趣味すぎる(いい意味で)

マーク・フォスター作品が今劇場で2つ公開されている。
ひとつは子供向け、ふたつ目はかなりアダルティ、
とても同じ監督が作ったとは思えない…。