ーcoyolyー

マグニフィセント・セブンのーcoyolyーのレビュー・感想・評価

マグニフィセント・セブン(2016年製作の映画)
4.5
ものすごく品格があって格調高かった。名前負けしてなかった。この監督すごいな、西部劇の美学とポリコレ的なもの両立させて余りある作品になっていた。ロングショットを始めとして品格があって格調高く冴え冴えとしていたカメラワーク、こんなに西部劇なのにここまでマチズモを感じないとかちょっと感動的だった。
西部劇を成立させつつ人種のバランスの目端が行き届いていて女性もしっかり活躍している。一体どんな監督なんだろうと思ったらアフリカンアメリカン男性でなるほどなと。
私は「七人の侍」は観てるけども「荒野の七人」は未見なのですが、これ完全にデンゼル・ワシントンが志村喬で、大元のネタに立ち返って西部劇のど真ん中にある「有害な男らしさ」を排除したのかなと推測した。

イ・ビョンホンがものすごくかっこよく撮られていて、ハリウッド映画でこんなに違和感なくアジア人がかっこいいって何?どういうこと?ってそこでも私感動して泣きそうになってて、でもこのかっこよさって日本人が日本人を撮った時のかっこよさで、だから違和感がないんだけどそこが違和感でもあって、彼は韓国人なのにこんなに日本人ぽく撮っていいの?韓国の人的にはこれ大丈夫?っていう困惑が生まれもした。なぜ日本人らしく撮られてしまったのかってそれは超簡単で元ネタが「七人の侍」だからなんですけど、この役元々は日本人で誰か探してピンとこなくて東アジア人に枠を広げてイ・ビョンホンを拾った感じかなとも思うんですけど、イ・ビョンホンをここまで日本人らしく撮るなんてこの監督ものすごく黒澤明の撮り方を研究し尽くしたんですよ。そうじゃなきゃこうならないから。三船敏郎を筆頭に黒澤明の日本人男性の撮り方を研究し尽くしててばない。

そう、とにかく隙がない。少しでも隙を見せると隙だらけの西部劇好き白人男性にウザ絡みされるの知ってるから気持ち悪いくらい隙がない。この隙のなさに私は少し悲しくなる。ここまで気をつけなければならない境遇に。他人に気をつけることを強制する何も気をつけなくてよくて隙だらけの有害な男らしさを垂れ流す人々からの攻撃を避けるために私たちがやらなければならないことを痛感させられてしまって。
黒人男性が主役でもデンゼル・ワシントンなら文句出ないでしょ?とかそういう細かい積み重ねでノーミスなの背筋がゾッとします。でも偉業なんだけど。彼が成し遂げたことは偉業なんだけど、ただ消費せずにその背景をしっかり弁えないとならないです。
ーcoyolyー

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